凍結破砕したレッドドラゴン
ウィブに乗って移動する。ウィブはワイバーンにしては大柄で、背中の鞍に乗せれば俺たち四人くらいならなんとかなる。
「ゼロ、ウィブ、久し振りだねエイブモズの町に行くの」
ルシルは上機嫌というわけでもないが、前に行った事のある町への再訪に少しワクワクしているようだ。
「儂はのう、あの時はヒヤヒヤものだったのう」
「だろうな。でもウィブがいてくれてレッドドラゴンとも戦えた。あの時は助かったぞ」
「そうかのう、ぬふふ……」
まあウィブがいてくれたお陰で、空中戦を行えたというのもあるし、その先のヴォルカン火山へ行く事もできた。あの時は助かったものだが。
「でもさ、よくよく考えてみたら、レッドドラゴンを呼び寄せたのもウィブだよね?」
ルシルの言う通り、ウィブがレッドドラゴンの棲み家を横切ったから、それに怒ったレッドドラゴンがウィブを成敗に来たんだった。
「結果としてそれがよかったんだけどな」
「そうね、そこは感謝しているもの。ありがとうね、ウィブ」
「お、おうふ、てっきり儂は怒られるのかと思ったがのう」
「そんな事はないわよ。ウィブには本当に助かっているもの。こうやって移動を助けてくれたりしてさ」
「おふふふ、なんだか背中がかゆくなるような気がするのう……うふふ」
ウィブが照れると言うのもなかなか珍しいものだが。
「なあウィブ、あれ……。あれだよな?」
「ふむ?」
俺たちが飛ぶ先、そろそろエイブモズの町が見えてくる頃。確かに町らしき姿は遠くから見えてきたけど、その手前、大きな氷の塊が転がっていた。
「あれってもしかして……」
「どうやらそうらしいのう」
「だよな……。ルシル、ユキネに思念伝達で用件を伝えておいてくれないか?」
俺はルシルに頼む。
「それなら出発した後に連絡しておいたよ。レッドドラゴンの遺跡で待っているって」
俺は町に立ち寄る事をルシルを通じてユキネに教えようと思ったが、ルシルは事前に話を付けていてくれたようだ。
「レッドドラゴンの遺跡?」
「ユキネがね、あの溶けないレッドドラゴンの破片は今じゃあ遺跡って呼ばれているんだって教えてくれたから」
「そ、そうなんだ……」
近くに来たら判ったが、レッドドラゴンの破片があちこちに散らばっているが、その周りが公園のように整備されていた。まばらだが人も集まっているようだ。
「観光名所みたいになっているのかな」
「さあ、どうかしら。でも屋台とか出ているみたいだしね」
「観光名所だな……。それにしてもあれから何年も経っているのに、まだ凍ったレッドドラゴンの破片が溶けていないのか」
あの時俺はレッドドラゴンを凍らせ、破砕した。その時はレッドドラゴンなんて気にしていなかったし、そのまま放置していたのだが、なんの影響なのかあの時凍らせた破片がまだ凍ったままでいるなんて。
「ユキネが言うには、夏場でもひんやりしていてあの辺りは快適だってさ」
「ふむ、なかなかにして珍しいものだな」
「ゼロがやったんだけどね」
「そうだけどさ。こうなるとは思っていなかったから」
「まあね、私も」
ルシルは肩をすくめて肯定する。
俺はウィブに頼んで一番大きな破片の近くに降りてもらった。