蜥蜴の皮膚
ロイヤの一族、バウホルツ族が族長から次の族長へと伝えられる秘密の情報。それがヴァンパイアに効果があるという話なのだが。
「火蜥蜴の革鎧、火蜥蜴と言えばサラマンダーだろう。それか炎を操る蜥蜴、ドラゴン……?」
「それはロイヤたちも判らないなん」
「う、そうなのか」
サラマンダーは精霊だからな、皮を剥ぐというのもイメージが湧かない。そうなるとドラゴンだが。
俺は横目でワイバーンのウィブを見る。
「そう言えばウィブはさっきどこにいたんだ? ロイヤもチュージも地下道で移動していたんだが」
「お、わ、儂は上空に退避しておってのう。危なくなったら助けようと待ち構えていたのだがのう……」
「本当かぁ?」
「う、うむ」
「いやでもそれが結果としてよかったのかもしれないな。戦いに巻き込まれて怪我でもされた方が大変だったよ」
爬虫類独特の顔で表情はよく判らないが、ウィブは安心したような目つきになった。
「でも、ウィブを見ても判るが、ワイバーンでも皮と言うよりは鱗だもんなあ。ドラゴンもそこの所は同じような物だ」
「そうだのう、儂の身体は鱗で覆われておるからのう。まあ魚のような鱗ではないから、鎧のように固くなった皮膚と言えなくもないが……」
「ふむ……。ウィブの皮膚を少しもらってみるか?」
「えひっ!?」
ワイバーンらしくない声を上げてウィブが後ずさりする。
「も、もしかして儂、炎を吐けるようになったから……」
「冗談だ。やるにしてもレッドドラゴンだろう。ワイバーンは火竜扱いじゃないからな。ウィブが炎を吐けるのは呪いによる物だ。そんな状況がロイヤたちコボルトの一族で伝説になっているなんて考えにくいからな」
あからさまにほっと息を吐き出すウィブ。悪い事をした、ちょっとビビらせすぎたかな。
「でもさゼロ、前にレッドドラゴンって倒したよね。その時はウィブも一緒だったっけ」
「ああ、そう言う事もあったなあ」
確かルシルがレイラ、ルシルの妹に魔王の角を奪われて、魔力が暴走していた頃だったな。その魔力制御に魔晶石を探していた時にレッドドラゴンと戦ったっけ。
「あの時はヴォルカン火山に行ったんだっけか」
「あ、でもあれは火口に飲まれちゃったよね」
「そうか、でもあの時はウィブを追ってきたレッドドラゴンもいたよな。つがいだった奴」
「あー! いたね!」
当時はそう気にしていなかったが、そうなるとあのレッドドラゴンの倒した身体があるはず。
「あれ、エイブモズのユキネの所にあるかもしれないな!」
その頃の記憶を辿りながら、火蜥蜴の革鎧を作るため俺たちはエイブモズを目指す事にした。