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新たな目覚め

 振り下ろされた炎の塊が俺に直撃する。


「大した炎だなっ!」


 だが俺には効かない。どれだけ高温だろうと温度変化無効のスキルが常時発動しているのだ。俺自身は火傷どころか髪の毛一本すら焦げたりしない。


「ほほう、耐えうるか儂の炎を!」

「熱はどうにでもなるが、この圧力はかなりのものだなっ……」


 俺は両腕を交差させて正面から受け止めた。炎の勢いで全身の装備が焼けただれる。


「まずっ」


 覚醒剣グラディエイト。魔力を帯びた聖剣はかなりの衝撃に耐えられるが、それでも金属でできた剣だ。急激な温度変化や岩をも溶かす熱にはどこまで耐えられるか。

 剣が徐々に熱を受けて赤く、そして段々と白く光り始める。


「こうなれば俺の魔力を注いで……」


 耐えた。どうにかこうにか耐えているが、それがいつまで続くか。


「抵抗は無駄ぞ、小さき者よ」

「ふっ、本当にそうなるかな、デカ物よっ! うおぉぉぉ! SSSランクスキル発動、重爆斬ヘビースラッシュ!! こんな炎などはねのけるんだっ!!」


 熱によってだけではなく俺の魔力で剣が光り始めた。魔力を注入されて虹色に輝く覚醒剣グラディエイト。


「うおおぉぉぉ!! 弾き飛ばせぇっ!!!」


 俺は渾身の力を込めて巨人の炎を押し戻そうとする。

 少し、ほんの少しずつだが巨人の炎がさがっていく。


「ほほう、力弱き者でもこれまで行えるとは……ふむ、侮りがたしは人の子よ」


 もう少しで押し切れる。そう思った時だった。


「はっ!?」


 刀身が真ん中で割れて左右に折れる。その間を突き抜けて炎の渦が俺を飲み込んだ。


「うぐわっ、ぬわあぁぁぁっ!!!」

「ほほほっ、心地よき悲鳴ぞ、これこそ儂の求めていた断末の歌声よ!」


 心から喜んでいるのであろう巨人の笑い声が炎の向こうから聞こえてきた。


「ふむ?」


 巨人の目が一点に集中する。

 折れた剣を巨人が見ていた。折れた剣は刀身が砕けたものの、俺の魔力で破片が剣の形を作っている。

 それどころか破片と破片のつなぎ目は俺の魔力で補っているため、その分刀身が長く大きくなっていた。


「俺は全裸になっちまったが、この剣一本はそれでも剣である事をやめなかったな」

「それは……どういう……」

「判らんか? この剣は覚醒すら超えて目覚めたのだ。剣を超えた剣として」

「なにぃ、意味が判らんぞ」

「なあにすぐ理解するさ」


 俺は鞭のようにしなやかで自由な動きをする剣を振る。魔力でつなぎ止められた破片が一振りの剣のように辺りを払う。


「儂の炎がっ」


 瞬時に炎の渦が消え、辺りには焦げた匂いだけが残った。


「それだけではないぞ。超覚醒剣グラディエイト、その真の力を知るがいい」


 俺が振った剣は狙い通り巨人の膝に当たる。


「あ、当たっただとっ!?」


 傷みよりもその状況に驚いたのだろう。巨人が目を見張って俺と自分の膝を交互に見る。


「浅かったか」


 だが腱は斬り割いた。巨人は斬られた右膝を付く。


「まっ、まさか儂の身体を傷つけるとは……。召喚されている途中ならいざ知らず、完全に召喚された儂の身体をっ!」

「どうやら肉体と幽体を同時に発現できるようだが、それであればこそ、物理と魔力の双方の能力を持つ超覚醒剣グラディエイトが効いたという事だな」


 俺は全裸で仁王立ちしてにらみつけた。片膝を付いている巨人を。


「さあ、形勢逆転と行こうか」


 剣を構え、俺はゆっくりと距離を縮めていく。

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