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操り人形

 ハイオークはそれでも怯まない。そこは流石に上位レベルとでも言おうか。


「だがなあ、俺の敵じゃあないんだよ」


 俺が剣を一閃すると、あれだけ威勢のよかったハイオークの鼻から上が吹き飛んだ。

 周囲にはどよめき合うオークども。だがそれより先、遠くにいる連中には事の次第が見えていないから、まだ俺に対して向かってこようとしている。


「いい加減にしろよな! お前たちじゃあ逆立ちしようが神に願おうが、俺には勝てないんだよ!」


 近付くオークを次々と斬り倒していく。それでも後から後からオークが押し寄せてきた。

 その中で俺は無人の野を行くがごとく、オークの集団の中を斬り進んでいく。


「な、なんだこの人間!」

「むちゃくちゃ強ぇぞ!!」

「オレたちの方が数は多いんだ、囲んで潰せぇ!!」


 オークどもは自分で鼓舞するがごとく、恐怖を払拭するように叫びながら突撃をかけてくるが、だいたいそういう事を言った奴から斬り伏せられていった。


「もう無駄な抵抗はやめるんだな。オーク程度じゃあ俺を止められないぞ!」


 その言葉通り、俺が歩みを進めた場所にはオークの死骸が散乱する状態だ。オークにしてみればそれこそ地獄と言ってもいいだろうな。


「流石にこの状況では俺に向かってくる奴も減って……お?」


 オークの攻撃が少し弱まったか、それともオーク自体の数が減ったか、隙間が見えてくるようになった。

 その隙間の先に、見覚えのある姿がチラリと見える。


「そこにいたのか、ランカ」


 オークの集団にあって目立ちすぎるくらいの赤い髪をした少女。その明るすぎる髪の色は土煙の中では特に目を引く。


「お前たちの呪詛じゅそ恐れるわけではないがな、我は戦いには加わらんぞ」


 それはそうだろう。ルシルの大罪の清算ジャッジメント・ギルティを食らっている状態だ。俺たちに向かって敵意を持っただけでも心臓が張り裂けそうになる。

 だからこそランカは俺への攻撃には直接手を下さず、オークを使って間接的に攻撃をしてきているのだろうが。


「無駄だったな、それは」


 俺はランカへにじり寄っていく。ランカは腕を組みながら近付く俺を見ていた。


「それはどうかな、人間よ。我ら血族はお前のような奴に屈したりはしないし、我らの行動を妨げる事はさせんぞ!」

「言っている意味がよく判らないがな、俺の平穏を邪魔してくれたんだ、それ相応の報いは受けてもらう」

「黙れ下等な生物よ! もはやリザクールがどうこうという話やコボルトがどうしたという話の次元ではない! これは我とお前たち人間との戦いである! 不倶戴天ふぐたいてんの敵をどのようにして滅ぼすかという戦いであるのだ!」


 おいおい、勝手に盛り上がっているようだが、俺への敵意を持った状態ではどうやら胸が苦しくなるようで、しゃべるごとに胸を押さえながら脂汗をかいて叫んでいた。


「無理をするな。お前がオークどもをいくら操ったとしても俺にはかなわないぞ。周りを見れば判るだろう、この積み重なったオークだったものの肉片を」


 俺は剣を払って付いた血を吹き飛ばす。

 オークは俺に敵意を持っているが、いざ自分が死に直面していると感じていたら簡単には俺に向かってこない。その上ランカが指示を飛ばさなければ最後の踏ん切りも付かない様子だ。


 俺が手を出さなければ、膠着こうちゃく状態が続くといった所か。


「くっ。悔しいがオークでは歯が立たないのは確かなようだ。何匹か用意したハイオークですらお前にとっては子供扱いだったからな……」


 ランカは俺をにらみながら状況を分析する。


「我とてお前には手を出せん。となれば更に上回る戦力にお出ましいただく他あるまい……」


 一瞬、ランカの口が引きつりながらも笑った形に歪んだ。


「こうなっては致し方なし……。おじいさまにお頼みする事になろうとはなっ!!」


 ランカが両手を地面に付けて何やら呪文を唱え始める。


「なんだ……これは」


 徐々に盛り上がる地面を見て、俺の直感が危険を告げていた。

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