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大包囲網

 ランカは相変わらず食堂の隅で小さくうずくまっているようだ。もう俺たちはランカの事を意識しなくなり、そこにいるのが当たり前の日常になっていた。

 だからかもしれない。いつの間にかランカが毛布の塊になっていても気が付かなかったのだ。


「なに!? ランカが消えただと?」


 俺が知ったのは書斎で書き物をしていた時だった。食料の在庫や資材など、帳簿を付けているのだ。腹が減ったら飯を探しに行く、といった生活も俺とルシルだけだったらよかったのだろうが、ロイヤやチュージたちもいるとなると、勝手に飯を取ってこいと言うのもなんだったんでな。

 そうした事務仕事をしていた時にルシルが何気に放った一言がきっかけだった。


「そうみたい。私もさっきロイヤちゃんに聞いてそれで見てきたんだけど、確かに毛布の塊というか布を巻き付けた毛布が部屋の隅に転がっているだけだったのよ」

「ずっと動きもなく気配もしなかったからなあ。いつからそうなっていたんだか」

「私も全然気が付かなかったよ」

「俺もだ。でも、帰ってくれたのであればそれはそれでよかったんじゃないか? いつまでも居座られて、でも生命活動というか、少しも動かなかったからちょっと不気味だったんだよな」


 かと言って殺して処分、という訳にも行かないだろうし。


「目障りだった?」

「そんな事までは言わないけどさ、気になっていたと言えば気になっていたと言うか、気にしていなかったんだけど、ちょっと気にかかっていたというか……」

「まあね、私もそんな感じだったから。いつの間にか気にしないようにはしていたけど……あれ?」

「……ルシルも気が付いたか」


 小さくうなずくルシル。俺も感じた小さな振動。


「細かく、小さく、広範囲……」


 床から感じる微細な揺れ。


「動きが揃っていないけど数は多いね」

「そうだな。目的は……俺たちなのか……?」


 俺は立ち上がって武器の保管棚から剣をつかみ取る。


「ゼロ様っ!」


 息を切らせてチュージが駆け込んできた。


「大変ですだ! オークが、多くのオークが押し寄せてきてますだよ!!」

「そうか、オークか。そうだな、二、三千くらいの数はいるように感じたが」

「は、はいっ、どれくらいいるかは判らねえですだが、すんげえ数のオークですだ!」


 俺は書斎の明かり取りから外を見る。確かに多くのオークが所狭しと押し寄せていた。


「オーク軍、か」

「ねえゼロ」


 ルシルも俺の隣でオーク軍を見ている。


「多くのオークってチュージの冗談かと思っていたけど、本当に多くのオークだったのね」

「え、そこ?」


 俺は気付いていたものの、あえて言わないようにしていたんだが。

 え? そこに気付いてくれたって感じで、チュージがなんだか嬉しそうに目を輝かせているぞ。そうじゃないだろ、この軍勢を目の前にして気にするところは冗談とかそう言う所じゃないと思うが……。


「ともかく木で建てられたこの屋敷だと戦闘には不向き。あれだけの数のオークに攻め寄せられたらひとたまりもないだろうからな」

「やっぱり敵対なのかな?」

「そうだな、俺が窓から顔を覗かせた辺りから敵感知センスエネミーが発動している。少なくとも俺に敵意を向けている事は確かだからな」


 ひとまず俺は防具を着けていない状態だが、剣を片手に階下へと降りていった。


「なんの目的もなくこれだけの軍を差し向けたりはしないだろうからな。口上だけでも聞いてみるか」

「そうだね」


 一階に降りた俺たちは、正面玄関の扉をゆっくりと開ける。その先には今にも飛びかかってきそうなオークどもが凄い形相で俺たちをにらんでいた。

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[気になる点] チュージはいつの間に石化が解けたんだろう?
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