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痛い腹をえぐられる

 脇腹に焼けるような傷み。かなり奥にまで突き刺さる。


「ぐっ、がはっ!」


 結構大量の血が口から出てきた。ささやかな抵抗だけど、ランカの顔に向けていっぱい血を吐いてやった。

 だが俺の血を浴びながらランカは挑発的な笑みを俺に向ける。


「その苦悶に満ちた表情、悪くないよ~」

「へっ、言ってろ」


 ランカの血染めの長剣(ブラッディソード)はランカの血でできているのか、金属の武器とは違って柔軟性も持ち合わせているのだろうか。その剣が更に体内でうごめいているようにも感じる。

 これはまずい。体内から攻撃されては流石に俺も骨が折れると言うか、身体が食い破られる。


「くっ、Nランクスキル発動、氷結の指(アイシング)! 冷気で……固めてしまえっ!」


 俺はランカの血でできた剣を凍らせようとした。


「へぇ、自分の腹ごと凍らせようとはね!」


 俺の冷気は剣だけではなく俺の肉も凍らせてしまう勢いだ。固めてしまえば今以上俺の腹で暴れられないはず。俺自身は温度変化無効の能力があるから冷気は効かないが、ランカの剣が染み込んだ部位は凍らせる事ができる。もはやランカの血と混ざった状態で、完全な俺の身体ではなくなっているからだ。


「ていっ!」


 俺はもがきながら凍った血の剣を覚醒剣グラディエイトで叩き割る。横からの攻撃であれば凍った血を割る事はそう難しいものじゃない。


「ぐふっ!」


 いってぇ!

 折った時の振動が腹の奥に響く。自分でやった事とはいえ、これは痛い!

 俺は一旦よろけながらも後ろに下がる。


「ゼロ大丈夫!?」

「ま、まあな。ちと腹をえぐるから、治癒を頼めるか……」

「えぐるの? いいけど」

「いくぞ」


 俺は服の袖をちぎり剣に巻き付ける。これで刀身を握っても手は切れない。

 そうして剣の切っ先を自分の腹に向けて、思いっきり突き刺す。


「あ、結構痛い。いたたたたた!!!」

「そりゃそうでしょうよ! 早く取るところを取っちゃってよ!」

「わ、判ってる……おりゃぁっ!」


 俺は腹の肉ごとランカの剣をもぎ取った。血まみれになっている脇腹をルシルに見せる。


「内臓は……ああ、ちょっと傷が付いちゃっているかも。でも任せて! SSSランクスキル蘇生治癒マキシムヒーリング!!」


 ルシルが治癒魔法をかけ始めたところでランカが邪魔に入った。


「そう易々とやらせたりなんかしないんだから!」


 新しく作った血の剣と跳び蹴りでルシルのスキル発動を邪魔しようとする。


「そうはさせない!」


 俺は血だらけの剣を握り直してランカを牽制けんせいした。

 ルシルが俺の穴の空いている左の脇腹とは別、右側から抱きついてくる。そうする事で、俺を抱きしめた手が丁度傷口に当てられるのだ。


「このままスキルをかけていくよ!」

「ああ!」


 ルシルの蘇生治癒マキシムヒーリングが効いてきたのか、少しずつ痛みが我慢できる程度にまでやわらいできた。

 これなら戦える! ルシルは俺に抱きついたままだが、腕は自由に使える!


「Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッターっ! 俺に近寄るなっ!」


 台詞だけ聞いていれば子供のケンカみたいにも思えるが、実際は脇腹に大穴の空いた勇者がヴァンパイアの少女を追い払うための威嚇いかく行為なのだ。


「ゆるい!」


 俺の放つ剣撃はことごとくランカにかわされる。

 だがそれも想定の範囲内。少しでも時間稼ぎができればいいのだ。ルシルが治癒をかけてくれて、俺が動けるまでに回復できたら。


「させないよっ!」


 俺の剣撃をかいくぐって、ランカの跳び蹴りが俺の顔面にヒットする。

 俺はどうにかこらえてランカの足の裏を顔で受けながら、左手でランカの足をつかんだ。


「逆に逃げられなくなったのはお前の方だぞ」


 鼻血を出しながらだが、俺はそう言い放った。

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