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血の呪い

 俺が吹き飛ばしたランカは屋敷の外にある塀の下でうずくまっている。

 ランカを追って俺とルシルも屋敷を出た。上空では退避しているウィブとロイヤが飛んでいる。石化したチュージは屋敷の中に安置しておいた。


「さてと、どうやらその呪法とかいうやつが消えたのか効果が薄れたのか、心理的な圧力もだいぶ治まってきたようだな」


 やはりあの圧力はランカの特殊な能力のようだな。今はもう心臓もバクバクしないし気圧されるような事もない。


「ふっ、ふふっ。リザクールを屠ったというからどのような猛者もさかと期待してみたけどさ……。見た目たいしたことのない奴のくせに」


 ランカは壁により掛かりながらも立ち上がる。頭や腕から血を流しているのは戦闘の中で負った傷と壁に激突した時の怪我か。


「ランカ様の呪法を受けてもここまで戦えた者は初めてだったよ……」


 俺はゆっくりとランカに近付いていく。


「お前の、お前たちの目的はなんなんだ。リザクールはコボルトを恨みに思っていたようだが、だが配下の者が裏切ったと言っても部族全員殺すとか正気の沙汰じゃないだろう」

「ふっふふふ、それは奴がリザードクラスだからよ」


 リザードクラス? リザードマンとかとはまた違うなにかか?


「我らの事は知らぬが道理。このランカ様もそうだが、お前たちが認識できない影の存在、それがヴァンパイアだ」

「ほう、闇夜に溶け込んで暮らしている、怪談話の一つかと思っていたが」

「怪談話? ふははっ、面白い事をぬかすなあ。我らヴァンパイアは影から支配する夜の一族!」


 血まみれになりながらも両手を広げ、赤い髪を更に赤く染めてランカは高笑いする。


「人々を闇から支配する究極の生命体、それがヴァンパイアだ!」


 支配か。

 言う事を聞かない子供を怖がらせるために親がついた嘘の物語、という訳でもなさそうだ。


「暗い中でうごめいて、一人見たら三十人はいると思った方がよさそうだな」

「おいお前、ランカ様たちをなんだと思っているんだ」

「ふむ……。排除、いや駆除すべき存在、とでも言おうか」

「酷い言われようだな……ひぃっ!」


 無駄なお喋りをしている間に俺は超加速走駆ランブーストで一気に距離を縮める。

 左肘をランカの首元へ持っていき、腕でランカの首を押さえつける。壁に挟まれたランカは俺の腕と壁とで首が絞まっていく。


「かはっ」

「確かヴァンパイアは心臓に木の杭を打ち付けたら死ぬんだよな?」

「ばっ、馬鹿なっ。誰だってそんな物突き立てられたら死んでしまうわっ!」

「やはりお前もそう思うよな。安心しろ、木の杭は手元にはないから」

「じゃ、じゃあ……」

「この剣、覚醒剣グラディエイトなら魔力を帯びた聖剣だからな、木の杭よりも効果があると思うんだが」

「ま、魔剣……」


 なるほど、魔剣と捉えるのもあながち間違ってはいないか。

 俺は覚醒剣グラディエイトの先端をランカの胸の辺りに近付ける。


「ちょっ、まったく、そんな剣で突き刺されたら間違いなく死ぬって!」

「だろうな。それが狙いだ」

「このランカ様が死んでもあのゴブリンの呪いは解かれないぞ」


 なんだって!?

 ゴブリンプリーストのチュージは俺の身代わりになって石化の呪いを受けてくれたのに。


「だったらその呪いを解く方法というのは……」


 官能的な身体、大きくふくよかな胸に俺は剣の切っ先を当てる。着ている革鎧の隙間、肌の見えるところから少し血がにじんできた。


「呪いを解く方法、それを教えろ。でなければこのまま串刺しだぞ、ランカとやら」

「ふっ、むざむざとやられはしないさ……呪法、血染めの長剣(ブラッディソード)!」

「なにっ!」


 ランカは自分の流した血を右手に溜めると、そこから剣が出てくる。血のように赤い、そして脈動するかのような狂気に満ちた真っ赤な剣が俺の脇腹に突き刺さっていた。

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