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思いもよらない家の姿

 リザクールの気配がなくなったはずなのに、まだ俺の敵感知センスエネミーがかすかに残っているような気がした。本当にかすかな耳の奥にある傷み……傷みというより違和感程度だな。


「それって疲れているからとかはあるのかな、ゼロはずっと戦いっぱなしだったから」

「ここ最近、のんびりした生活が続いていたからな。敵感知センスエネミーって程の強さじゃないから、勘違いなのかもしれないが……。それより肩、どうだ? 家に戻ったら少し揉んでやろうか」

「うん、そうしてくれると嬉しい。ほんと、冗談抜きに重くってさ……」


 ルシルも疲労からだろうか、肩凝りが酷いらしい。厄介事が片付いて肩の荷が下りるってものなんだろうけどな。


「お、家が見えて……んんっ!?」


 草原のど真ん中にぽつんと建っているはずの家だ。そりゃあ俺の建てた岩の小屋は壁しか残っていないが、ロイヤが建ててくれた家が三軒あるから、ちょっとした集落に見えるかもしれないな、なんて思っていたけど……。


「ゼロ、見て!」

「見て……いるよ。って、一晩でなにが起きたんだ!」


 驚いている俺たちの所でロイヤが尻尾をふりふり駆け寄ってきた。もはやその姿はコボルトと言うよりは仔犬に近い。その後ろにはゴブリンプリーストのチュージが神官服姿でゆっくりと歩いていた。


「ゼロちゃん! ありがとうね!」


 俺に飛びつくロイヤ。そのもふっとした毛並みが俺に伝わってくる。


「ありがとうって、いやよく判らないんだが……」


 後から来たチュージがロイヤを引き剥がす。


「ロイヤちゃん、安静にしていなくちゃいけねって言ったに、もうはしゃいじゃって、わりー子ですだなあ。ゼロ様、お戻りになってよかったですだ。見てくだせえよこれ」

「ああ、チュージ俺も何があったのかを聴きたかったんだが……家がなくなって、代わりに立派な屋敷が建っているんだが。俺、戻ってくる位置を間違えた?」

「いんや、ゼロ様たちのおうちはここで間違いねえですだよ」


 じゃあやっぱり。


「ロイヤちゃんが目を覚ましてから、ちょちょいと頑張っちまったんですだ」

「頑張ったっていうレベルじゃないが……」


 あんぐりと口を開けながら見上げると、木造ではあるものの三階建ての立派な屋敷が目の前にそびえていた。


「あんまりそんなじろじろ見られると恥ずかしいなん……。まだ装飾もそんなに手をかけられていないから……」

「いやいや、そんな次元じゃないぞロイヤ。大きな館は建てられないんじゃなかったか? それが、いやそれだとしても一晩でだな、えっと、なんというか……」


 確かにまだ荒削りな部分はあるものの、建物としては立派な屋敷だ。いくらコボルトのスキルがあったとしてもこれだけしっかりした建物を、しかも病み上がりのロイヤが一晩でなんて……。

 信じないわけにはいかないが、いや、ここにある現実を見れば信じざるを得ないのだが。


「あのねあのね、ロイヤね、うんうん寝ていてね、起きたらいろいろ頭に浮かんだのをやってみたのなん。そしたら今まで造れなかった建物も頭の中に図面が出てきたのなん!」

「それでこれを建てられたって言うのか……凄いな」

「えへへ~」


 ロイヤは破顔して喜んでいる。

 これは俺の推察だが、生死の境をさまよっていた事で能力が上がった可能性がある。元々持っていた家具や建築のスキルが成長したものかもしれない。


「でもね、まだ絨毯とか食器とかはないのなん。木のお皿やフォークなら作れるんだけどなん……」

「いやいや、ここまで建ててくれただけでもたいしたものさ。内装は俺たちも手伝うからさ」

「うん! 嬉しいなん!」


 ロイヤはチュージに引き剥がされた事も忘れてまた俺に飛びついてきた。


「あ、そうだ。ちょっとルシル、あれを貸してくれ」

「あれって?」


 俺はルシルの小袋に入っている物を指定する。

 俺の考えが間違っていなければ、だが。

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