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幽霊コウモリの正体見たり

 襲い来る半透明のコウモリたちに剣を向ける。俺の持っている剣は覚醒剣グラディエイト。魔力を帯びた聖剣だから幽霊やスピリット系の、実態を持たないモンスターに対しても効果がある、はずだ。


「さ、さ、さあ、こいっ!」

「ゼロ、私も補佐するよ」


 ルシルが電撃を放つがコウモリたちはそれをかわして俺の方へ飛び込んでくる。


「くっそう! させるかっ!」


 無我夢中で剣を振り回す。知らない間に俺は目をつぶっていたらしい。剣に何かがぶつかるその衝撃だけが伝わってきた。まるで何か肉を切るような、骨を断つような。


「ん、衝撃?」


 考えてみると霊体ならなんらかの圧力があったとしても、こんな手応えはない。

 恐る恐る目を開けてみる。


「なっ……」


 そこには身体が真っ二つになったネズミコウモリどもが転がっていた。


「き、斬れた……のか? あ、いや、この表面は」


 俺はネズミコウモリの死骸を一つつまみ上げる。


「畜生、騙されたっ!」

「えっ、ゼロどういう事!?」

「こいつら霊体でもなんでもない! ネズミコウモリの身体に視覚透過のスキルでも使っていたんだろう、実体が存在しやがった!」

「じゃあこの明かりは……あっ、私の手に付いた!」


 ネズミコウモリをつまんだルシルの指が淡く光っている。それは俺の手も同じで、見れば剣も刃がほんのりと光っていた。


「そう、燐光りんこうの粉でもかけていたみたいだな。ネタが挙がってしまえばどうというものでもなかったぞ!」

「さすがゼロ、こんな瞬間で見極めちゃうなんてすごい!」


 本当は無我夢中だったんだが、それでも謎は解けた。結果的にはな。


「そんな事もないだろう。これは判るべくして判っただけの事だ」


 そう言って俺はリザクールに剣先を向けた。


「おいマント男! お前の手品はタネがバレたぞ! この暗い中で光ってくれるとは、逆に俺たちに狙ってくれと言うようなものだな!」


 俺の笑う姿を見てリザクールが悔しそうに歯噛みをする。


「くうっ、やりおったな……しかし、我の優位は変わらんっ! 受けてみよ、変幻自在の空中殺法を!」


 リザクールは浮いていた所からふわりと滑空するように俺たちの方へ向かってきた。


「返り討ちにしてやる! Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッター! 向かってくるマント男を斬り割けっ!」


 俺の放った真空波がリザクールに向かって飛ぶ。このまま行けば丁度鉢合わせになる!


「甘いわっ!」


 リザクールはぎりぎりの所で俺の真空波を避ける。空中でも方向転換ができたのだ。


「やるな……だがっ! ルシルっ!」

「うんっ!」


 リザクールの避ける先にルシルが電撃を放っていた。


「あぎゃっ!」


 小動物が潰された時のような声を出してリザクールが墜落する。この機を逃さずに落ちたリザクールへと突進した。


「……なんてな」


 リザクールは飄々(ひょうひょう)とし立ち上がる。


「お前たちの攻撃は我に通用せんのだ!」


 リザクールにダメージが行っているようには見えない。


「呪いのせいかっ!」


 呪いは掛けられた者、そう俺たちを弱らせるだけではなく、掛けた者への攻撃も防いでしまうのだ。これは城を破壊した時に判っていた事なのだが……。


「くっ、どうすれば……」


 焦れる俺たちを見て、リザクールは勝ち誇ったような顔を見せた。

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