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 正直言ってまずい。まずすぎる。

 破壊系のスキルは確かに発動できるし、それなりに効果を出す事はできた。城の壊れ具合を見ればそれが判る。少し俺が思っているよりも壊れ方がぬるい気もするが。


「だが……あのマント男に対してほとんど効いていないというのはな……」

「ゼロ、大丈夫なの?」

「判らん。だがあの呪いのせいで奴にダメージを与えられていないという事が判った」


 攻め方を考えなくては。今までの戦い方では奴を倒せないのかもしれない。


「我の城をここまで汚すとは、許さんぞ勇者よ……」


 リザクールがすごい剣幕でにらんでくる。

 城の尖塔はいくつか破壊したもののリザクールはそれ程酷い怪我を負っているわけではない。直撃を避けたのか、それとも俺のスキルの威力が落ちているのか……。


「ええい、許すも許さないも、こっちこそお前を許さないぞマント男! 食らえッ、Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッター! 闇夜を切り裂け、真空の刃よっ!」


 俺の抜いた剣から真空波が飛び出す。

 だが、リザクールの身体に当たる直前で俺の真空波が弾かれる。


「弱い者に対してであればそのような技も効くのかもしれんが、我がお前より強いのか、それとも……ほほう、なにやら我の掛けた呪いの炎が見えるぞ。お、そこな魔王にも少量だが呪いの炎が見える」


 やはり、チュージの解呪は呪いを完全に無力化はできなかったか。ロイヤに掛けられた呪いは、チュージ、ルシル、そして俺に分散して宿っているという事で、進行はその分ゆっくりになるが呪いの効き目は発現してしまうという事なのか。


「くそっ!」


 おっぱいをわしづかみというそのリスクがここに来て出てきたか! 一時の欲望に溺れた自分を呪うか、いや、やはり炎の呪いは顕現けんげんしたという事だ。

 いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。俺たちのやった事は間違っちゃいない。結果論になるが、チュージだけに任せる事はやはり危険だった訳だ。俺とルシルにも分散できたのはよかったと思いたい。


「だがそうすると、ここをどう凌ぐか」

「こうなってはただで帰すわけにもいかんなぁ!」


 リザクールが瓦礫の中から飛び出す。いや、空中に浮かび上がる。


「我の眷属けんぞくたちよ、そこな勇者どもの生き血を吸って吸って吸い尽くしてしまえっ!」


 来るか、ネズミコウモリども……。


「えっ!?」


 なんかあのコウモリ……青白く、うすぼんやりと光っているようにも見える。暗がりだからよく判らないが、身体が透けているようにも……。


「だ、駄目……っ、ゼロ、あれゴースト……」

「やっぱり!?」


 背筋が寒くなる。温度変化無効のスキルが常時発動しているから、本来は寒さなんて感じないはずなのに。感覚的に寒くなった気がする。


「や、やばっ、俺……ああいう」


 奥歯がカチカチと鳴る。


「スピリット系は弱いからね、ゼロって……」

「い、言うなよ……」


 だからといってここでうずくまって震えているわけにも行かない。

 俺は噛み合わない歯の根を力で押さえつけて、向かってくる半透明のコウモリたちに剣を向けた。

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