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応急手当と探索者

 リザクールが霧散して、ひとまず嵐は過ぎ去ったようにも感じたが、屋根の下はそうでもなかった。

 ロイヤが顔を赤くして苦しそうにうなっている。


「ロイヤ、大丈夫か」


 俺たちが駆けつけた時にはロイヤは食堂の椅子から転げ落ちていて、身体を丸めて苦しがっていた。


「とにかく寝室へ」

「うん」


 俺がロイヤを抱きかかえて運ぶ。ルシルはドアを開けたり寝室のベッドを整えたりしてくれる。


「ここへ、ゼロ」

「ありがとう」


 俺はロイヤをそっとベッドに寝かせると、ロイヤは少し目を開けて俺たちを見た。


「あ、ゼロちゃん、ルシルちゃん……もう、大丈夫なん?」

「ああ。敵は撃退した。薄気味悪いリザクールというマント男だったが、もう消え去ったぞ」

「リザクール……ああ、あのコウモリ男なん……」


 苦しさをこらえながらもロイヤが応えようとする。


「無理をするな。少し休むといい」

「うん……」


 浅くて早い呼吸を続けるロイヤ。軽く頭をなでてやるがその程度ではこの苦しそうな症状をすくう事はできない。


「ルシル」

「やってみる……。SSSランクスキル蘇生治癒マキシムヒーリング……」


 念じるようにルシルがスキルを発動させる。淡い光が部屋を包んでいく。

 ロイヤの呼吸が少し落ち着いたように見えた。


「どうだ?」

「判らない。怪我や病気はこれで治るんだけど……呪いが原因だとすると、対処療法的に症状を軽くするくらいがせいぜいみたい」

「完治はできないか?」

「そもそも呪いだとすると、完治も何もないからね……」

「そうか。呪いの根絶とすれば」


 俺は上を見上げる。寝室の屋根は無事だが、俺はその先の上空を意識してにらみつけた。


「あのコウモリ野郎をどうにかするしかない、か」

「仕掛けた本人だからね」


 解呪となると余程の者しかできないし、高位の者でなくては呪いに触れる事すらできないらしい。

 そもそも聖職者や神聖魔法を使える者となれば俺が知っている中でも限られてくるからな。


「ルシル、ロイヤを見ていてもらえるか?」

「私が?」

「そうだ。ロイヤが苦しんでいる状態を放っておけない。あのコウモリ野郎を捕まえるにしてもだ」

「じゃあゼロが一人で行くって事……?」

「心配か?」

「そ、それはそうだけど……私がいなくて本当に大丈夫?」


 ルシルは本気で心配してくれているようだ。その目が物語っているからな。


「大丈夫だ、俺一人でも何とかしてみせる。あのコウモリ野郎から解呪方法を必ず引き出してやる」

「判った。ゼロがそこまで言うなら……」


 ルシルは急に無言となり、精神統一をし始める。


「ごめんねゼロ、私はあなたを裏切る事になるのかもしれない」


 ルシルの口から俺の予想とは異なる意外な言葉が出てきた。

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