内部崩壊
超巨大な火の玉が襲ってくる。太陽を彷彿とさせる炎の塊だ。
「焼け滅べっ!」
炎の轟音でリザクールの言葉も聞き取れないくらい。
「ゼロ、ここは私が海神の奔流で」
「よし。ルシルは爆散した延焼を海神の奔流で頼む!」
「え、爆散!?」
議論している時間はない。あれだけの巨大な火の玉だ、水で押し流そうにも勢いも水量も足りずに一瞬で蒸発してしまうだろう。だとすればあの大きさを小さくすればいい。分割して。
「SSSランクスキル発動、地獄の骸爆っ! 砕け散れ、火の玉ぁ!」
俺は火の玉に向かって地獄の骸爆を叩き込む。
「ふっ、勇者とやらも底が浅い!」
「なにっ!」
「そのスキルは一度見ている。我がその対策を取らずにいるとでも思っておるのか!?」
なん、だと……。
リザクールが余裕でいられる理由。
「ゼロの爆散が、飲み込まれていく!」
ルシルの言う通りだ。俺の放った爆発が巨大な火球にすっぽりと飲み込まれ、中で爆発しているのかもしれないがその様子すらも確認する事ができない。
「ゼロ! 私も地獄の骸爆を! 元々魔王のスキルだから効果的に爆発させられるかもしれない!」
「いや、ルシルは予定通り海神の奔流の準備だ! もう既にこの熱量で家とか火が点きそうな所が出始めている!」
「じゃ、じゃあゼロはどうするの!」
俺は一つうなずくと、全身の力を足に込める。
「ちょっとあれ、散らしてくるさ」
それだけ言って俺は火の玉に飛びかかった。
「ゼロっ!!」
ルシルの声が一瞬聞こえたが、すぐに炎の轟音でかき消される。周りは既に炎で一杯になっていて、俺の温度変化無効スキルが無ければ燃え尽きていたかもしれない。
「溶ける前に氷を……Rランクスキル発動、氷塊の槍! この豪炎の中で氷の槍よ突破口を作り出せ!」
俺の手から無数の氷塊の槍が出現するが一瞬で蒸発してしまう。だがそれでも俺は氷の槍を生成し続ける。
「おう、なかなか詰まってきたぞ!」
俺の周りには霧のようになった水蒸気が充満している。俺は完全に高温の水蒸気で蒸されている状態だ。
だがそれは火球の中に水蒸気の溜まる空間ができているという事!
「押し切れないのであればっ!」
俺は持っていたナイフを構えて上に向ける。
「SSSランクスキル発動、重爆斬! 爆発寸前の水蒸気よ、一気に弾け飛べっ!」
思いっきりナイフを突き上げ、スキルを発動させる。この圧力で今まで押しとどめていた火球が、水蒸気爆発と剣技の破壊力で内部から弾き飛ばされるのだ!
屋根を吹き飛ばした時と同じように、上空へと押し上げる事によってなるべく地上への被害を減らせたらいいな。どれだけでかい火球であっても、空高く飛ばしてしまえば燃える物がなくなって消えるしかないだろう。
「さあ、もってくれよ……」
俺は先端から溶けかかっているナイフを剣の代わりにしてスキルを発動させたのだ。これが魔力を帯びた覚醒剣グラディエイトであれば全力の効果が出ていただろうが、ただの肉切り用のナイフだ。どこまで耐えられるか。
「この火球を押しとどめ、押し上げ、爆散させるまで!」
俺は右手でナイフを掲げ、左手をそれに添える。
「Nランクスキル発動、氷結の指! スキル同時発動、ナイフを氷で冷やせ!」
ナイフが炎とスキルで消耗するところ、少しでも冷気で耐久力の減少をと思ったが。
「あ」
熱せられたナイフに冷気が当たった事でナイフにヒビが入ってしまう。
「やばっ」
一瞬持ちこたえたと思ったが、ナイフが粉々に砕けてしまった。