表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/1000

引き出された情報と仲間の行方

 正気を失った兵士たちが泣きわめく。それはそうだろう、お互いの両腕がくっついてしまっているのだ。


「チュージ、お前の回復魔法はなかなか悪意があるな」

「えへへ、そんなに褒められると照れますな」


 いやそこは褒めてないのだが。どちらかと言うと流石に引いてしまうところだ。

 でも俺たちの家を破壊した奴らの一味だと思うと、少しはよくやったと思うところもある。


「これでは話が聞けないな。平静なる精神(クーリング・マインド)みたいな魔法は使えるか?」

「はい、Nランクの神聖魔法でしたらそこそこ覚えておりますよ」

「なら頼む。混乱解除コンフューズリリースが使えればそれでもいいのだが、Rランクはゴブリンプリーストだとまだ覚えないだろう?」

「すいません、ビショップまで成長すれば覚えられるんですけどね、まだおいらには使えねえんです」

「そうか無理を言って済まなかったな。こいつらが落ち着くように頼む」

「はい、もちろんでさ」


 チュージはゴブリンプリーストの魔法を唱えて腕をつなげられた兵士たちの精神を落ち着かせる。

 本来であれば戦闘前の緊張を解いたり不安を解消する程度の魔法だが、今は神官系の神聖魔法を使える者がチュージしかいないので仕方がない。


「ほあ……ふぅ」

「えへ、腕が、腕がくっついちゃってるよぉ……えへへ……」


 兵士たちは状況を理解していないだろうが冷静さは取り戻したようだった。魔法で無理矢理にだが泣きわめくことはなくなった。


「お前たちに聞くが、ここにいた者たちはどうした。ここに住んでいた者たちだ」

「住んでいた~? 本隊が来た時にはもう誰もいなかったって聞いたぞ~」

「戦闘も無かったって言ってたけど、先遣隊でジャイアントがいたらしいっていう話題にはなってたなー。なんでも一方的に叩き潰した、とかって騒いでいた奴がいた」

「叩き潰しただって!」

「ああ、何かの見せしめにするとかで、連れて行ったらしいなあ。俺も見たかったぜ~」


 ヒルジャイアントが連れて行かれたというのは本当なのか。俺は情報を早く引き出したい衝動に駆られるが兵士の胸ぐらをつかもうとした俺の手をルシルが止める。


「ゼロ」

「判った。おい、そのジャイアントはどこに行った?」


 兵士たちは悩んだり考えたりしているようだが、どうやら記憶には無い様子だった。


「さあねえ、ジャイアントを連れて行ったとしても本隊か先遣隊の奴らだし、俺たち後続の兵士には噂しか来ないからなあ」

「俺もジャイアント見たかったぜ~」

「商人はいたか、荷馬車はあったか?」

「さあ、それこそ聞いてないね、商人の荷馬車なんてあったら皆が漁ってるわなー」

「ひゃはは、違いねぇ!」

「そうか」


 どうやら後続の、それもこうして落ちこぼれている兵士たちにはそれ程情報が伝わっていないらしい。だがそれでも商人の荷馬車の話が出ていないという事は、シルヴィアとカインは無事である可能性が高い。

 それにガレイの町から護衛として付けられた警備隊の精鋭たちがいたとすれば、うまく身を隠しているのかもしれない。


「ねえ、この腕どうしたらいいのかな?」

「そうだよ、ずっとくっついているのは嫌だなあ」

「なんだよ、俺とくっついてるのが嫌だってのか? 俺だって嫌だけどさ」

「じゃあ離せよ」

「くっついてんだから離せないだろ」


 兵士たちがつなぎ合わされた腕で騒ぎ立て始めた。


「ゼロ様、よかったらおいらが後は引き受けましょうかい?」

「ああ、そうしてくれるか」

「はい、それじゃあ、魔法解除(キャンセリング)!」


 チュージが魔法を唱えると、さっきかけた回復魔法の効果が解除される。兵士たちの腕がそれぞれ切断された状態に戻った。


「ぎゃぁぁ!」

「痛い痛い痛い!」


 回復が無かった事にされ、腕から血を噴き出した兵士たちは事切れる。


「シルヴィアたちがどこにいるか確認しよう。それと王国の兵たちが他にいないかも調べるとするか」


 ルシルを通じてゴブリンたちにも協力を仰ぐ。

 目に見える範囲には痕跡が無いとすると、森の奥に隠れているかもしれない。

 俺は日が落ちてきて暗くなり始めた森を見る。


「無事でいてくれよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ