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香りをたどって

 燻製を作るまで数時間かかるから、その間に別の仕事をこなしてしまおう。

 俺は鹿の解体を済ませて部位に分ける。


 肉は食べる用と保存用に分けて、保存用は塩蔵する。

 岩でできた小屋の地下に保管庫を作ってそこで長期保存ができるようにしたんだ。穴を掘って周りを固めて、中に素焼きの壺を置いて保管する。


 塩は海水から作った。

 塩田を海岸近くで整備して、できた塩を使っている。


 この辺りの技術は商人としてあちらこちらの文化を知っているシルヴィアや、知識量なら誰にも負けないと豪語するピカトリスなんかの話を聴いた記憶を頼りにやっていた。


「こう考えると、俺の周りにはすごい奴がいっぱいいたんだなあ」

「ん、どういう事?」

「まあな、こうやって小屋で暮らすっていうのも面白いんだけどさ、俺が今いろいろやっている生活方法っていうのかな、生きる知恵みたいなものって、みんなから教わった事だったりするんだよな」


 そう言うとルシルも何かを考える様子でうなずいた。


「そうね、ゼロがこんなに家庭的な仕事ができるなんて思っていなかったもん。そりゃあ強さにかけては他の追随を許さない物を持っていたけど、そういうのってだいたい生活力なかったりするでしょ?」

「おいおい、俺は妹のアリアを育てているくらいだから、一般常識も生活知識も豊富なんだぞ!?」


 あのダメオヤジのお陰で生活能力は人一倍育っているんだ。多少のサバイバルなんてどうとでもなるさ!


「それは頼もしいなあ。そうしたら何でもできちゃいそうだよね」

「まあ人ができるくらいの事なら、その道の達人にはかなわないにしても、使える物くらいはできると思うぞ」

「すごいね~」

「じゃなかったら、こうはなっていないさ」


 俺は壺の中に鹿肉と塩を交互に入れていき、最後に蓋を閉めて大きめの石を乗せる。


「これで少ししたら水分が染み出してくるから丁寧にすくってやればいい。地下室の冷気が丁度いいんだよ」

「へぇ~。そのために地下室にしたの?」

「それもあるけど、俺がまだ家にいた頃は地下室なんて作れなかったからな。まあ、小さい頃にやってみたかった事、かな」

「そうなんだ~。ねえ、燻製見に行かない?」

「ああ、ちょっと様子を見に行ってみるか。ついでに少し、味見してみよう」

「うん!」


 足取りも軽くルシルは地下室のはしごを登っていく。まだ広い地下室じゃないからな、階段とまではいかないんだ。

 でも拡張できたら面白いだろうなあ。


「ねえゼロ」

「なんだ?」


 ルシルに呼ばれてはしごを登りながら上を見る。

 当然そこにはルシルの足があって、短めのスカートの中には……下着が。


「えっちね」


 こ、こいつ……。


「まだ日は高いが……」


 俺がルシルに手を伸ばそうとしたところだが。


「ちょっと待って」


 いつになく真剣な声に変わる。

 小屋の外に何か気配が。外に置いてある物は鹿の皮を干している台と道具や飾りに使おうとしていた骨の山だ。

 後は燻製機……。


「ルシル、静かにな……」


 小さくうなずいて指を動かすルシル。スキルを発動させる前の準備みたいなものだ。

 俺たちは小屋から飛び出して燻製機へ向かう。


「むぐっ!?」

「動くなっ!!」


 俺の抜いた剣が燻製機の前で座っていた奴の喉元で止まる。


「動くとお前の首が二度と飯を食えなくなるぞ」


 腰を抜かさんばかりに驚いているそいつは、犬のような耳を生やした女の子だった。

【後書きコーナー】

 新章突入~! ありがとうございます~!


 来ましたね、出ましたね。犬耳ですよ犬耳! これは次回の掘り下げと言いますか描写と言いますか、さてどうなる事やらですが。きっと私がイメージしている性癖が突っ込まれる事かと思います。


 昔の登場人物もちょいちょい名前が挙がってきていますが、さて、復活登場はあるのでしょうか。

 そればかりは私もこれから書くので判りませんけど、リクエストがあるようなキャラクターって、いるのかなあ? どうかなあ?


 ではまた!

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