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のんびりしてみたい

 日がな一日、のんびりする日々が続いている。とは言っても、まだ海底から出てきて数日と言ったところかな。


「ゼロー、鹿捕まえてきたよー」

「お、すげえな!」


 小屋の前に大きな鹿が転がっている。ルシルの一回りも二回りも大きい大人の鹿だ。大きすぎて小屋に入りきらない。


 岩でできた小屋は荒れ放題だったが、昨日今日で少し片付いた。穴は岩の板壁(ストーンウォール)で一旦ふさぎ、そこにこねた土を塗り固めていく。そうしてスキルの効力が消えた後でもきちんとした壁ができるという物だ。


「調理場も作ったし、煮炊きはできるようになったのはよかったよ」

「近くに良質の粘土が取れるから、上手く使えばもっといろいろできそうだよね」

「そうだなあ、まずは食べる事を先に、って思ったけど……ちょっといいか?」

「なに~?」


 俺は小屋を出てルシルを小屋の脇へと連れて行く。


「煙突の付いた箱? 人ひとりくらい入れそうな大きさだね」

「ああ。ルシルが狩りへ行っている時に作ってみたんだ」


 木でできた箱は俺の胸の高さくらいまである。その四角い箱は手前だけ扉が付いていて、それを開けると中には木の枝を細かく裂いて作った網が間仕切りのように据え付けられている。

 天板にはフックが付けてあり、物が吊るせるようにもできるんだ。


「これってもしかして」

「おう、鹿をさばいて肉をこの網の上に載せるんだ。大きなかたまり肉は上から吊り下げよう」

「うん、面白そう!」


 俺たちは早速鹿の解体にかかる。両脚を上に上げて腹の皮を縦に斬り割く。なるべく血や肉が地面に付かないようにして手早くバラしていく。


「ゼロはこういうの得意なの?」

「得意って程じゃないけど、衛士になる前は森の中で獲物を捕らえて食べていたからなあ。自分たちで飯を確保しないと生きていけなかったからさ」

「そっか。アリアもいたから大変だったね」

「ああ……オヤジは全然帰ってこなかったからなあ」


 そんな話をしながらも鹿を部位ごとに切り分けていく。

 流石にここまで大きい獲物は久し振りだ。肝の部分は小分けにしてさっきの箱の中にしまう。同じように切り取ったもも肉を天板から吊るしておく。

 鍋を支える足を付けてその上に鉄鍋を乗せ、その中で香りのよい木片をいっぱい入れる。丁度鍋の上に網が来るように。

 鍋の下の空間に炭を置いて火を付け、熱が出るようにする。


 鍋の中の木片が炭に温められて煙を出してくる。ふんわりとした香りが辺りに広がっていく。


「こんなものかな……」


 扉を閉めて煙が逃げないようにする。火が消えないよう扉の下には少しだけ隙間が空けてある。


「燻製機だね?」

「そう。前にシルヴィアたちが鍋と金網を使ってやっていたのがあったからな、それを真似てみようと思って」

「あれ美味しかったよね!」

「ああ。それに日持ちもするし、あれだけの鹿だ、いろいろ保存方法も試してみたいと思ってな」

「塩漬け肉ばっかりじゃ味気ないもんね」

「そうだな、塩もまた海に行かないと……足りなくなったからちょっと買ってくるって言うわけにもいかないから」

「あっは、不便だねえ」


 そう言いながら、ルシルは楽しそうに笑っていた。 

【後書きコーナー】

 お読みくださりありがとうございます。

 今日、これを書いている時点で、本作が500万PVをいただきました。ありがとうございます!

 それだけ多くの方に、多くのページを開いていただいているなんて思うと、感無量です。


 なんだかんだ言って、また次の章を書き続けている辺り、もう身体に染みついた作品になってしまったのかもしれません。


 もうちょっと、続くのかなあ?


 それでは。

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