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女王の立場

 俺たちはもう一度竜宮城に戻ってきた。

 あの地震に加え火山弾も大量に降ってきたらしく、竜宮城も瓦礫の山となっている。


「これは酷いな……。建物らしい建物は無くなっているじゃないか。おお、乙凪おとな! 大丈夫か」


 俺は乙凪おとなを見かけて寄っていく。こういう時泳いでいくのはどうももどかしいな。

 俺の言葉で緊張の糸が途切れたのか、乙凪おとなたちは肩の力を抜いて海底にへたり込んでしまう。仕方がない事だろうが大変だったな。


「なあ乙凪おとな

「はい、なんでしょう……」

「何人か怪我人が出たらしいが、それくらいなら治癒のスキルでどうにかなる。死んだ者はいなかったとポセイたちから聞いたぞ。よくやってくれた」


 俺たちが海溝だった所から戻った時に竜宮の戦士であるポセイたちがいたので簡単に状況は聞いていた。


「はい、避難誘導が早かったからでしょうか、皆無事に逃げる事ができましたよ」

「そうか。人的被害が無かったのはよかったな」

「ええ。城もそうですが皆がいれば復興も可能ですから」


 疲労困憊ひろうこんぱいだがそれでも笑顔を絶やさないマーメイドの王女だ。


「こんな時に、いやこんな時だからこそ女王は一体どうしているんだ?」

「女王様はあちらに……」


 乙凪おとなに促された方を見る。そこには炎海竜サラペントのプレアリーに似た顔立ちの女性が国民の世話をしていた。

 きっとこれが地上だったら、汗まみれ泥まみれだっただろうな。


乙凪おとな、女王って……いや、俺たちと一緒に来た炎海竜サラペントなんだが」

「はい……え!?」


 乙凪おとな炎海竜サラペントを見ると驚きが顔に出る。それはそうだ、なんせ自分の母親と瓜二つなんだからな。顔は。

 違いと言えば、炎海竜サラペントの方が若そうな感じがする。


「まあ、炎海竜サラペントのプレアリーは人間の姿をしているからな、足かヒレかを見ればすぐ判るが」

「え、ええ。そうですね。わたくしもお顔しか見ていなかったら、若い頃の母上かと思ってしまう程、お顔立ちが似ていらっしゃったので」


 やはり女王の娘から見てもそう思うらしい。それを聞いてセイレンが乙凪おとなの肩を叩く。


「初め見た時はそう思うだろうね乙凪おとな

「セイレンお姉様」

「プレアリーさんが言うには、あたしのお母さんに会った時の姿を身体変化メタモルフォーゼする時の参考にしているってさ」

「え、そんな事ができるのですか?」


 セイレンは恥ずかしそうに小さくうなずく。


「なんでも、今まで見た人間の姿で一番美しい人を真似たって言っていたけど、長い年月人間を見たのはその時だけって言うからさ、あたしのお母さん以外に見た事ないのかよって思わず突っ込んじゃったよ」

「あはは、セイレンお姉様らしい。そういう事だったのですね。伯母様のお姿を真似られたのであれば確かに母上、女王陛下に似ていてもおかしくはないですもの」

「だよね」


 俺たちの会話が聞こえたのか、女王が世話の手を止めて俺たちの方へとやってくる。その動きは疲れているものの優雅な立ち居振る舞いだった。


「ご挨拶もせずに失礼いたしましたわ皆様方」


 尾ビレを巧みに使って泳ぎ、手を胸の前で交差させて礼をする。きっとこれが竜宮での正しい挨拶の仕方なのだろう。俺たちもそれにならって返礼をした。


「女王、俺はゼロ。よろしく頼む。こいつがルシル、俺のパートナーだ。そしてセイレンは……見知っているな。となるとこの二人が」

炎海竜サラペント母娘おやこですわね。本当、姉上に生き写し。マーメイドは長命ですがそれでも歳は取るもの。そうですか、若い頃の姉上にお会いだったのね……」

「そういう事らしいな。まあ身体変化メタモルフォーゼした姿だからな、炎海竜サラペント母娘おやこ同士で似ていないというのも判るが。まあ、ドラゴンの時の姿では細かい所で似ている似ていないは判らないんだがな」

「まあ、それは……おほほほ」


 女王は手の甲を口に添えて笑っている。


「世界を救った英雄方のご帰還ですからね、盛大とはできませんが寄せ集めでよろしければあちらに少し宴の用意をしておりますので」

「そうか、それは助かる。まあ正直、宴よりは寝床が欲しい所だがな」

「宮殿はご覧の有様ですが、天幕を用意しております。そちらでお休みいただけますわ」

「ありがたい、救助や支援を手伝いたい気持ちはあるのだが、済まん、少し寝させて欲しい」

「判りましたわ。それではこちらへ」


 俺たちは女王の案内で天幕に向かった。

 その途中も国民たちが女王へ声をかけている。


「女王様、ご無事で」

「いつもありがとうございます」

「ああ女王様、お召し物もこんなに汚れてしまって……」


 こういう光景を見ていると、竜宮の女王は国民に慕われているようにも思えるなあ。女王も献身的に世話をしている様子だし。まあ、いい国なんじゃないかな。

【後書きコーナー】

 いつもお読みくださりありがとうございます。応援、励みになっています。


 今回はなろう特有の話を。

 普段は何話かストックをして、毎日更新が途切れないように準備しているのですが、ここ数日いろいろありまして、今回の一話はリアルタイムで書いています。そのため、誤字脱字とか校正とか、間に合っていない部分があるかもしれませんが、Web小説という事でご容赦を。

 誤字脱字報告、随時受け付け中です! ユーザーの番号は判るのですがそれがどなたかを検索する方法がなろうでは存在しないので、直接お礼を言えないのがもどかしいです。

 (私が見つけていないだけ?)

 ですので、この場をお借りしてお礼といたします。


 海底シリーズは宴会をやって終わりにしたいと思います。こちらもいろいろありましたけどね、長くなったし、いい区切りだと思うので。

 地上に出たら、次は何をしようかなあ~。


 それでは!

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