新たな臣下との契約
巨大な火山弾が迫ってくる。
「一旦海溝の作業は止める! 炎海竜、持ちこたえてくれよ!」
俺の言葉が伝わっているのかどうかは判らないが、今度は上に集中だ!
降りかかってくる火山弾は町丸ごと一つ入るくらいの巨大さ。さあこれをどうするか。
「フローラ!」
「何だよこんな時に!」
「お前、俺の臣下にならないか!」
「き、急に何だよそれ! 誰がお前の家来なんかになるかっ!」
それもそうだよな、いきなり過ぎる話だ。
「いいか時間がない。俺はレイヌール勇王国初代国王、ゼロ・レイヌール。退いたとはいえ王たる力は備えている!」
「それがこの状況でどう関係するんだってんだ!」
「俺の臣下になれば力を分け与える事ができ、俺も強くなれる。この場限りで構わん、俺の臣下となれ!」
「なっ……」
俺はルシルを見る。
うなずいてくれているから理解はしているのだろう。
「いいかルシル」
「うん。SSSランクスキル、術士の契約者!」
ルシルが契約者スキルを発動させた。これでルシルの能力が飛躍的に向上し、魔法の威力が倍増する。
「Rランクスキル、氷塊の槍っ!」
ルシルの放つ氷の槍が大量に発現し、周囲の火山弾を弾き飛ばしていく。
「すごい……、さっきとは比べものにならないくらいの数、そして威力っ!」
フローラが初めて目にするだろう強化系の能力だ。
「SSSランクスキル発動、王者の契約者! 討ち滅ぼすための力をっ!」
俺も自分のスキルを発動。臣下がいる事で力が増幅する。これは臣下が近くにいる事、臣下の能力が高い事、そして人数がいる事で効果が上がる。
「行くぞぁっ! SSSランクスキル発動っ! 重爆斬っ! 砕け散れ、火山の岩よっ!」
俺の剣から放たれる一撃はそれだけで巨大な火山弾を木っ端微塵に砕く。
「あ、あんな大きな岩も……」
フローラが驚いている姿を横目にルシルへと指示を飛ばす。
「ルシル、水流を使って海溝へ破片を!」
「判った! Rランクスキル海神の奔流っ!」
ルシルが水流を作り瓦礫となった岩石を海溝へと流し込む。
「これで結構稼げたはずだが」
「でもまだ先は長いよ。それにまた火山弾! 今のより大きい!」
確かにルシルが言うように、次々と火山弾が飛んでくる。かなりの大きさの物もその中に紛れて。
「フローラ! 今だけでいい、お前の力を借りたい!」
「くっそう、しょうがねえ、今だけ、今だけだぞ! 今だけ俺はお前の家来になってやる!」
「助かる! フローラよ、汝を今この時より我が臣下として契約を行う!」
「け、契約って何すんだよ!?」
「ただ承知すればいい。心より認めれば自然と力が湧いてくる」
「判った、判ったよ! 家来になる、なってやる!」
フローラが宣言すると、フローラの身体が淡く光り始めた。
「これで契約は成立だ。後はいつ解除しても構わないが、今この時だけ能力を有効に使ってくれ!」
「いいだろう、使ってやるさお前の、王との契約の力っ!」
「フローラが力を貸してくれるお陰で俺の王者の契約者もさらに協力となるっ!」
一番大きい火山弾も渾身の一撃で破壊する事ができる。
フローラを見ると、ドラゴンの姿のまま俺と同じくらいの大きさに成長した。
「おお、これなら少しは母ちゃんの助けができるぞ!」
そのままフローラは海溝を押さえにまわる。
俺とルシルは降り注ぐ火山弾を砕いて海溝へ流し込む。
「ゼロ、それでもこれだけの距離の海溝、まだ先は長いよね……」
「そうだな、海底渓谷を埋める素材には事欠かないだろうが、それでもまだ始まったばかりのはず。魔力も間に合えばいいが……」
俺たちの魔力が枯渇するまでに隙間を埋めきる事ができればいいのだが。
流石に破壊するだけでは解決しない事となると、力押しでは難しいか。
「噴煙が……凄いね」
海底火山の噴き上げる灰色の噴煙。その中には火山弾の赤い燃える光も見える。
「さてと、どちらが先に音をあげるかな」