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海底の接着剤

 母親である炎海竜サラペントに寄り添うようにしていたフローラだったが、その視線は覚悟を決めたもののように思えた。


「お前、でも身体が。今だって俺の指くらいしかない大きさなのに!」

「この海溝の距離を押さえられるか、だろ!?」


 炎海竜サラペントがもだえるその身体の下には地面の深い溝が見える。これが海を割る海底渓谷か。炎海竜サラペントはそれを広がらないように押さえ込んできたようだが。


「俺だって……」

「だが俺の頭一つ分身体が伸びた所で精一杯だったし、人間の姿になったとしても俺とそう変わらない。これだけ長い渓谷をその身一つで押さえようなどと……」

「でも、母ちゃんが苦しんでいる! この様子だと俺が代わって母ちゃんを休ませるくらいしかできないだろ!」


 フローラはやる気になっているが、そもそもが無茶だ。なにせ海溝はどれだけ続いているかも判らないくらいずっと遠くへとつながっている。その上に炎海竜サラペントが横たわっているんだ。

 大きさも力も母親には到底及ばない。


「お前の身体では炎海竜サラペントに代わる事は……」

「くっ……」


 海中だから判らないが恐らく涙は海の中に流れ出してしまったのだろう。フローラは目を真っ赤にしていた……。


「母ちゃん……。俺に、もっと力があれば……。あと百年早く生まれていれば……」

「フローラ……。よし、俺も何か手を尽くしてみよう。あの溝も脇から岩石を投げ入れて埋めてしまえば、地面が引き裂かれても新しい地面を作れるのではないか?」

「できるのか、そんな事が」

「判らん、が」


 俺は右手に魔力を溜める。炎海竜サラペントの動いた隙間に向かって溜めた力を放出させてみよう。


「Rランクスキル発動、岩の板壁(ストーンウォール)、続けてNランクスキル発動、工作クラフト! 造った岩盤を海溝に放り込む!」

「ゼロ、これを海溝全域でやるの!?」

「やるしかあるまい! ルシル、魔力が足りなくなったら貸してくれ!」

「それはいいけどさ、ちょっと無茶が過ぎるんじゃないの!?」


 それは判っている。だがただ手をこまねいて海底が裂けるのを見てはいられない。やれる事はやってみる。それでどうにもならなければまた別の手を考える!


「くそっ、お……さまれ……えぇ!」


 炎海竜サラペントが浮かせた部分の溝は徐々に埋まり始めている。海底までふさがっている訳ではないだろうが、それでも引き裂かれる海底を俺の岩盤が接着剤のようにつなぎ止めていく。


「すげぇ! 人間すげえな!」


 フローラが喜んでいる。効果は抜群だ! 地面の揺れが少しは抑えられたようにも思える。

 だがそれも手放しでは喜べない。


「これがずっとあの奥まで行ければ……!」


 そうだ。フローラが希望を抱くように、このまま行ければ海溝はふさがるかも知れない。

 俺の魔力が尽きなければの話、だがな。


「どうゼロ?」

「ああ! まだまだ行けるぞ!」


 気力を振り絞って次々と岩盤を投入していく。気の遠くなりそうな作業が続いていくが、それでも少しでも効果が認められれば!


「ゼロ! 危ないっ!」


 大きく噴火した時の火山弾がゆっくりと俺たちめがけて降ってきた。

 海中だからゆっくりだがな、それでもとんでもない大きさ。逃げるには時間がかかる!


「こうなれば……」


 駄目で元々、やってみるか!

【後書きコーナー】

 応援ありがとうございます! 皆様の閲覧が私の元気につながります。ブクマ、評価ありがとうございます。


 また戻ってきましたね、炎海竜サラペントの海溝に。もうそろそろおしまいかなと思ったのですが、まだ終わらせてくれないみたいです。

 ですのでもう少しお付き合いください。


 次の展開とかこの海底シリーズが終わったらどういう冒険が見たいか、ご意見ご要望もお待ちしています。

 どんな冒険をしたいかなあ。


 それでは。

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