染み渡る菌糸
雨のように降ってくる火山弾。結局は治しきれなかったという事なのか。
「母ちゃんが見えてきた! 母ちゃん! 母ちゃーん!」
フローラが俺の肩から飛び出して炎海竜に向かっていく。今は元々の小さい身体のドラゴンになっている。俺の人差し指くらいの大きさだ。
「母ちゃん!」
炎海竜は唸り声を上げてのたうち回っている。身体を海底に叩き付けるたびに大きな地震と噴火が起きた。これはかなりまずい。
「フローラ危ないぞ! この勢いに巻き込まれたら!」
「だって!」
フローラを捕まえようとするがすり抜けられてしまう。こんな時にやたらと機敏だな。いやこんな時だからこそか。
「母ちゃん、どうした! 何があった!」
フローラは炎海竜と意思の疎通が図れるのか、何か会話のようなものをしているが。
「ルシル、思念伝達で聞く事はできないか」
「やってみるね!」
ルシルの意識で介在して会話を伝え聞く事はできるだろうか。思念伝達が使えれば俺たちの考えを炎海竜へ伝える事もできる。
「ゼロ……」
「どうした、駄目だったか」
「ううん、炎海竜と話はできるんだけど、どうも全身に菌が……」
「菌、だと……」
ウェルシュとか言う汚物野郎は討ち滅ぼした。でもそれは俺たちが通った中での事。言ってみれば消化器官だけの話だ。
「ただの便秘かと思っていたが、そうじゃなかったのか」
「あいつの、ウェルシュの目的は全身への菌の浸潤、全身に行き渡らせる事だったのかもしれないよ……」
「でももう奴は消滅させてしまった。これなら生かしておいて……いや、生かした所で治癒方法は知らんだろう、菌を張り巡らせる事はできてもな」
だったら少しでも苦痛を与えるべきだったか。いや、それでも結果は同じだ。
「ルシル、蘇生治癒とか治癒スキルでどうにかならないか」
「この大きさだもんね、それこそ行き渡るまでにどれくらい時間がかかるか」
「人間の姿になる事はできるのか」
「まってね、聞いてみる……」
大きさまではコントロールできるかどうか判らないが、人間並みの姿に変えられるのであれば。
だがそうすると別の問題もあるのだが。
「できるみたい。でも」
「海底の押さえか」
「うん。それは炎海竜も言っていた。人間の姿に変身するのは多分できるけれど、そうなったら海を押さえる事ができないって」
そうだ。炎海竜が死んでも人間の姿になっても、どちらにしても海底は割れて世界が分裂してしまう。その衝撃に海底の国々も地上の者たちも大きな打撃を受けるだろう。
それこそ壊滅的な。
「それ、俺がやる!」
そう言ったのは小さい身体で俺たちを見るフローラだった。
【後書きコーナー】
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作家さん仲間で、プロットってどうなの~なんていう話題が出ていましたので今回はそのお話。
プロットって、何かを作る時の下書きみたいなもので、小説で言うとネタ帳みたいな感じでしょうか。いろいろなストーリーのあらすじとかアイテムとか人物設定とか、そういう物を準備して、いざ執筆! なのですね。
まあ作家さんによってはそれを頭の中でまとめられる人もいるので、直接小説を書き始めちゃうっていう人もいるにはいるのですけど、私の場合、流石にこれだけ長い話を書いていると、過去との不整合とかキャラのブレとか出てきちゃうんですよね、記憶だけだと。正直、書いていて全部は覚えていません! なので資料が大切になってくるのですね~。
私の場合、キャラ相関リストなんていうのが役立っています。誰が誰をどう呼んでいるかとか、そのキャラの簡単なプロフィールとか。
で、なんでこんな話を書いたのかというとですね、だいたいプロットというのはストーリーを書いていたりするものです。次どうなるかとか指標になったりするものです。
さあ、炎海竜がね、こうなっちゃいました。その先のプロットが無いので、次回がどうなるのか……。私もワクワクして見守ろうかと思っています!
それではまた! 頑張れ私!