表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

565/1000

菌じ手

 行き来した道は覚えている。それ以上に方角さえ合っていればあの長大な炎海竜サラペントの事だ、どこかにはたどり着ける。


「ゼロ、フローラが見えてきた!」


 俺たちは最大出力でフローラを追っていた。先行していたフローラは俺たちに気付いて泳ぐ速度を緩める。


「つかまれ!」


 俺が手を伸ばしてフローラを捕まえ、そのまま肩に乗せた。フローラはしっかりと俺の肩にしがみついている。


「振り落とされるなよ」

「大丈夫!」

「よし、ルシルさらに頼む!」

「Rランクスキル海神の奔流(ウォーターバースト)っ! もう一発加速っ!」


 ルシルのスキル発動と共に速度が一気に上がり周囲の景色が飛ぶように消えていく。俺は剣を突き出して魔力を込める。これで少しは水をかき分ける事ができて効率よく前へ進めるのだ。


「急いで! 地面が凄い揺れているよ!」

「遠くに火山が見えるぞ! フローラ、炎海竜サラペントのどこへ行けばいい!?」

「右、頭の方へ向かって!」

「判った!」


 俺は剣を少し右へと向ける。それだけで水をかき分ける圧力が変わり進む方向も右へと動く。


「あの奥! 火山が!」

「また噴火し始めたって事かよ!」

「とにかく早く母ちゃんのところへ!」


 フローラの悲痛な声が聞こえた時だった。


「そうはさせねえ!」


 目の前に立ち塞がる汚物まみれの集団。


「またお前か、ウェルシュ!」

「あれしきの事で俺様が退くとでも思ったのか!? そうはいかねえいかせねぇぞ!」


 ウェルシュとその周囲の汚泥おでいに近付いていく。


「黙れっ、そのまま突っ切ってやる!」

「それができると思ったら大間違いだぜぇ! 食らえッ、オイランプラズマっ!」


 ウェルシュは両手打ち鳴らすとそこから光の矢をほとばしらせる。


「馬鹿なっ海中だぞ! 海の中で電撃なんて拡散されて長い距離は……なにぃ!」


 揺らめく姿と泡になっている海水……ウェルシュの周囲が沸騰している!?

 その中で光の矢が俺たちに向かって飛んでくる。


「ぬぅっ!」


 舵のように剣を傾けて急激な方向転換を行う。勢いが付きすぎて足が逆に振られるくらいだ。


「ちぃ、足に少しかすったか」


 鈍い痛みが左のかかと辺りに走る。


「ルシルは大丈夫か!」

「うん。でも光の矢……電撃とはまた違うスキルかな」

「判らん。だがあの汚物から出るガスのような物が熱を持って、それが電撃のような物を作っているのかもしれん」


 俺は右脇にルシルを抱え左肩にフローラを乗せながら剣に魔力を充填させる。前と違って今は外だからな、思いっきり行けるって訳だ!


「ルシル! あれを!」

「了解っ、さあこれで力尽きなさい! SSSランクスキル地獄の骸爆(ヘルズ・バースト)ォっ!」


 ルシルの作った巨大な爆炎がウェルシュを包み込む。


「ぐっ、ぐわぁぁっ!」


 叫び声と共に爆散する。

 これで辺りに汚物をまき散らすが、その中心にいるウェルシュには防壁となる汚物はもう存在しない。


「流石だな助かった!」

「むぐぅ、一度ならず二度までも」

「うるさいっ、次は俺だ! SSSランクスキル発動、重爆斬ヘビースラッシュ! 無防備な姿を見せたが最期っ、これでも食らえっ!」


 俺の振るう剣が周囲の空間ごと歪めるような強大な爆圧を発生させる。距離のあるウェルシュに対してもダメージを与える事が可能だ。

 空間が圧縮され、次の瞬間大爆発を起こす。


「大地をもうがつこの力、お前一人のために使ってやったんだ。感謝する事だな」


 もはや影も形も残っていないウェルシュに言葉を投げかけてやったが。


「もう聞こえないどころか存在すらしていないよ」

「そうだな」


 俺はもう一度剣を構え直してルシルは海神の奔流(ウォーターバースト)をかける。もうあんな細菌野郎に関わってはいられない。

 俺たちは炎海竜サラペントまでの道を急ぐ。またしても降り注ぐ火山弾の中をくぐり抜けて。

【後書きコーナー】

 今日も投稿。お読みくださりありがとうございます。

 ウェルシュ、再登場です。元々菌なので菌っぽい何かを出そうと思ったのですが、そこで出てきたのがマイコプラズマでした。直接的な表現を避けるため、舞子じゃなくて花魁にしたのですが……ねえ。

 でもよくよく考えてみると、投稿したのが2020年5月1日、新型コロナウイルスでパンデミックになっているご時世です。そこで肺炎を引き起こすマイコプラズマを出すのは不謹慎かな、とは思ったのですが、フィクションです。まったく別物として温かい目で見守っていただけたらうれしいです。


 そこで気になったのがプラズマ。水中で電撃ができない、遠くへは届かないというのはまあアリとして、プラズマってどうしたらいいのでしょうね。エネルギーを加え続けてマイナスの電子が電離して不安定な状態になって、とかって……正直よく判りません。

 でも、テッポウエビのハサミからプラズマが出るとか、調べると興味が湧く内容ばかり。確かに面白いですね。指パッチンみたいな動作で衝撃波を出すとか、どこの十傑集だよ、って話で。


 まあそんな、プロットを編みながら調べ物をしていると、いろいろと知見が広まるというか、調べる数分前より人生豊かになった気がします。

 たとえ気のせいだとしても、ね。


 それではまた~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ