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正式な歓迎会

 俺たちが竜宮城に戻ると、ここを出た時とは打って変わって大歓迎を受けた。


「前の珊瑚でできた牢獄とは別物のようだな」

「その節は失礼いたしました」


 俺の何気ない言葉に乙凪おとなが反応する。あ、嫌味で言った訳ではなかったのだが……どうやら俺の表情で気持ちを察してくれたみたいだ。


「どうぞこちらへ」


 そんな乙凪おとなに俺たちは付いていく。


「あ、こっちだと大広間みたいになっているんだね。よかったねゼロ、牢屋じゃなくて」

「こらルシル、もう少し気遣いというか、なんか、えっと。まあその……」


 一応俺はルシルの事をたしなめる。俺も少し済まない気持ちがあったからなあ。


「いいのですよルシルさん、そう気を使わなくとも」

乙凪おとなちゃん、私も言い方っていうのがあったよね」

「いえいえ。おっしゃる通り、竜宮城を出た時の印象が悪かったのだと思います。申し訳ございませんでした」

「そんな、乙凪おとなちゃんは悪くないって」


 ルシルと乙凪おとなが謝り合戦を始めてしまっている。

 まあ俺はそんな二人を置いて広間に入ってみよう。


「ほう、これは……」


 鏡みたいな物を上手く使っているのか、海上の光を上手く取り込んで部屋を明るくしている。その光が海中を照らす帯のようにもなっていて、さらに幻想的な風情を醸し出す。

 海中での活動がそれなりに長くなっている俺から見ても、やはりいろいろな物が浮遊しているというのが珍しく見える。


「いらっしゃいませ、ゼロ様」

「この度はありがとうございました」

「かっこいい……ステキ……」


 周りを泳ぐマーメイドたちから礼と賞賛の声が上がる。屹立きつりつしている衛士のマーマンたちも、俺を見る目から畏敬の念が感じられる。


「確かにこの前とはまったく違うな」


 そのマーメイドたちの中から何人か飛び出してくる者がいた。


「ゼロ様!」

「おお、確かお前たちはマーメイドの六人!」

海虎かいこの六将です、ゼロ様」

「ああそうだった。海虎かいこの六将な、サフラン」

「はわっ、サフランの名を覚えておいででしたかっ! サフラン、嬉しさで溺れてしまいそう……」


 海中で溺れるというのも斬新な表現だな。よほどのものという意味合いだろうか。


「セイレン、サフランたちはこんな性格だったっけ?」

「ええ。普段の彼女たちはあんな感じですよ。ただ、いざ外敵と戦うとなればそこは海虎かいこの六将。戦乙女としての働きは十分にいたしましょう」

「そうか。なるほどセイレンのいう通り勇ましいが、こうしてドレスに身を包んでいる姿を見るとそんな戦場に身を置くような女の子には思えないな」


 素直な感想を述べるとサフランが恥ずかしそうにしていた。


「まっ、ゼロ様ったら」


 サフランは俺の肩を叩いてくるが、照れ隠しなんだろうな。というか、痛い、結構痛いぞ。そう何度も叩くなよ。


「さあさ、お料理をどんどん運ばせますので、魚たちの踊りをご覧になりながら、お腹も満たしてくださいな」


 乙凪おとなが手を叩くと、きらびやかな衣装を着たマーメイドや魚たちが周りを踊り始め、奥からは料理を載せた籠がいっぱい運ばれてきた。


「なるほど、皿に乗るというよりは籠に入れるという事なのか」

「ええ、海の中ですからね。ただ周りは全て水のため、お酒やお飲み物はございませんの」

「はははっ、そうか。そうかも知れないな。酒がない宴会というのもまたいいだろう」

「はい、お酒以外でゼロさんを酔わせてみせますわ」


 乙凪おとなが籠からフルーツのような海藻の実を一つつまみだし俺の口に運ぼうとする。


「こら乙凪おとな、そういうのはあたしがやるからいいんだよ、ねえゼロさん」

「いやちょっとセイレンも自重しなさいよ。そういうのゼロは困っちゃうんだから。だよねゼロ?」


 セイレンとルシルが加わって、俺の周りでガチャガチャやり始めた。


「ちょっと疲れたからな、少し横になりたいんだが」


 休ませてもらおうと思ったが、女性陣は変わらずああでもないこうでもないとやり合っている。


「そういう事なら俺が枕になってやろうか?」

「フローラか。でもお前、それはありがたいが枕っていっても俺の指くらいの大きさしかないだろう?」

「そんなものは俺が身体を膨らませば……」

「おお……」


 フローラが口をつぐんで力を入れると、徐々に大きく膨らんできた。

 小さいドラゴンの身体が大きくなって俺の頭くらいの大きさになる。


「なる程これはいい。じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ」

「お、おう……」


 俺はフローラの上に頭を載せて目を閉じると、すぐに意識が遠のいていった。

【後書きコーナー】

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 マーメイド編のラストエピソードにさしかかって、少しのんびりモードです。


 竜宮城の料理ってどういうものなのでしょうね。今回はお酒がないとか、液体物については出しにくいかなって思いまして、こういう感じにしました。食べ物も、釣り餌みたいな感じになるのでしょうかね。魚が食べる物ですから。

 そういうのも考えていると面白いですね!


 それではまた、続きをお楽しみください。

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