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世界を背負うという事

 海中を急いで泳いでくるのは竜宮の連中。


乙凪おとな、それと竜宮のマーマンたち」

「ポセイだ」

「あーそうだったな。この所接していなかったので忘れていたぞ」


 ポセイたちはむくれているが、俺は気にしない。


「それで、炎海竜サラペントに近付くなんて一体どうしたんだ」

「大きな海底地震がありましたので、様子を見に来ようと」


 ああ、炎海竜サラペントが数百年溜め込んでいたおりが体外に放出されたからな、その時の動きが海底地震になったのだろう。


「長いこと便秘していたみたいだもんね、それが解消したんだから身震いくらいするでしょう」

「またルシルは直接的な物言いをするなあ。そこは女の子なんだからもう少し言葉というか言い方というか」

「そう? 変に気取って話が判りにくくなるよりはいいんじゃない?」


 まあそうなんだけどさ。


「で、でもだな、そうだとしても何も乙凪おとなが来る事もあるまいに。それこそそこのマーマンたちに偵察させればいいことだろう」

「ゼロさん、わたくしの事をそんなに気にかけてくださるなんて……」


 あ、いやそういう意味で言ったのではなのだが……。


「ゼロ、直接的な物言いをしないから相手が誤解しちゃうんじゃないの~?」

「う、うるさいっ」


 俺はごまかすように身体の汚れを手で払う仕草をする。落とすような汚れは付いていないのだがな。さっきの水流であらかた流されたから。


「それでゼロさん、炎海竜サラペントは退治されたのでしょうか」

「それだがな、俺は退治しないで共存を考えている。お前たちも考えてみてはくれないか」

「えっ、でもそれではまた海底火山がいつ噴火するか。それにさっきみたいな海底地震も……」

「そうなんだが、実はな……」


 俺は炎海竜サラペントの娘であるフローラを紹介し、炎海竜サラペントの役割と海底の崩壊について説明する。これで理解してくれると楽なのだがな。


「なるほど……。ですがそれではやはり脅威は残ると」

「今言ったように炎海竜サラペントがいなくなれば逆にそれが海底の、そして世界の崩壊につながるというものだ。俺としては世界の終わりを賭けてまで奴を倒そうとは考えられなくなってな」

「ですがそれはそのフローラという小ドラゴンが言う事。事実かどうかは判らないのではないでしょうか」

「確かにそうだが、では乙凪おとな。お前ならどうする? その可能性が少しでも拭い去れないというのであっても炎海竜サラペントを死に追いやるか」

「そ、それは……わたくしでは判断できません」

「そうだろう。俺には俺の、お前にはお前の立場というものがある。だが決断するという事は責任を負うという事でもある。誰かに決めてもらった事なら上手く行かなかった時は文句も言うだろう。だが、自分で決めたのであれば文句を言う相手は自分だ」


 為政者というものはそういうものだ。俺も国を動かしていたからな、その時の重圧や責任は確かに存在した。人のせいにできない苦しみも。


「今なら炎海竜サラペントも脱力しているところだ。もしかしたらお前たちでも倒せるかもしれない。どうだ、世界の運命を背負う覚悟があるのなら今ここで炎海竜サラペントを打ち滅ぼしてみてはどうかな?」

「うっ……」


 そりゃそうだろう。状況を見に来たくらいで世界をどうするか判断を迫られるとは思っていなかっただろうからな。


「いや、俺も意地悪な言い方をした。許せよ」

「あ、いえ……」

「それもあって、俺は炎海竜サラペントをこのまま世界を支える柱として、今まで通りその責務を果たしてもらおうと思っている。皆の意見はどうだろうか」


 周りを見回す。


「どうやら反対意見は無いようだな。よし、それではこれで炎海竜サラペントの話は終わりだ。竜宮城に戻ろうか」


 俺の意見に反対する者はいなかった。

 どうやら炎海竜サラペントが落ち着きを取り戻したようで海底火山の噴火も収まっているようだ。ここまで劇的に変わるとは、俺としても驚きだがな。

【後書きコーナー】

 いつも応援ありがとうございます。評価を入れていただいて嬉しいです。よろしければまだ評価されていない方も、面白いと思っていただけたらポチっとお願いします。


 さあ、そろそろマーメイド編も終わりに近付いてきています。もう少々お付き合いいただければ嬉しいです。


 私も竜神の逆鱗みたいに、海中で息ができて話ができるなんていうチートアイテムがあったらいいなあって思っています。そういった妄想を作品に反映させる事ができるのも、クリエイターの楽しみです。

 逆に言うと、そういうヒントを他の作家さんや読者さんとの会話から生まれる事もあったりします。ですので、面白いアイディアがございましたら、是非ご感想などでお知らせいただければと思います。


 それではまた!

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