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霧散する汚泥

「ぶっ、はぁっ! がぼぼっ!」


 大量の水に押し流されて外に出る。深呼吸をしようとした所で海水を飲み込んでしまっていきなりむせる。


「がはっ、はあっ……ぜぇ、ぜぇ」

「馬鹿だなあ、人間のくせに海の中で息をしようとか、頭おかしいんじゃないの?」

「お、お前が竜神の逆鱗を持っていてくれていると思ったからな……」


 俺は自分で竜神の逆鱗を持ち直して口に当てている。鱗を通してなぜか海中の空気を取り込めるようになって、ようやく俺の呼吸も楽になってきた。


「なんだよ人間、別にお前は俺の子供じゃないんだからさ、無償の愛でお前の呼吸を守ってやる義理なんかねえんだぞ?」

「それはそうだがな……」

「だからって急に手放す事はないだろって? ええ? そういう事だろう?」

「いや……」


 俺の左肩に乗っているフローラは俺の小指くらいの大きさに縮んでいる。


「あれ? さっきまで俺の頭をぐるっと回るくらい身体が長かったのに」

「あ~、あれは結構疲れるんだよ。俺の身体は伸び縮みできるけどあれだけ伸ばすのは体力を使うんだ。だから今は引っ込めて小さくなってんだよ」

「そうか」


 結構無理をさせてしまったのだろうな。


「助かったよ」

「べ、別にお前のためじゃねえし! あの汚物野郎を吹き飛ばすのにお前の力を利用してやったんだ、礼を言われる筋合いじゃねえからな!」

「おう、そういうことにしておくぜ。ありがとうな」

「やや、やめろって! 人間なんぞにそんな事言われると、なんだか背筋がかゆくなってくるぜ」


 そうは言うけどなんだかもじもじして、照れているのか?

 小さすぎてよく判らないけどな。


「それでウェルシュだが。この辺りの海水が濁っていてよく判らんのだ。フローラ、お前の赤外線暗視インフラビジョンで探せないか?」

「ああ。どれどれ……」


 小さいフローラが俺の肩の上で辺りを見回している。これでウェルシュの奴が見つかればいいんだが。


「凄い濁りだな……数百年、溜まりに溜まった汚泥が海中に散らばって……魚もあまりの毒気にやられて逃げ去ったようだな」

「ほう。それで」

「あの方向。それでも逃げない、そこそこ大きな個体。魚とは違う……人間のような形。あれが細菌野郎だな」

「あっちだな、よし。そのまま肩に乗っていろよ」

「ああ、逃げ出す気力もねえや」


 確かに視界はかなり悪い。伸ばした手の先が見えなくなる程濁っている。

 これが排泄物の濁りだと思うと少し滅入るが、そうも言っていられないだろうさ!


「この方向で合っているんだな!?」

「俺はそう言ったぞ人間」

「ようし……Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッター! この汚濁な海域を斬り割けっ!」


 抜刀した剣の一振りで真空波が生まれ、その波が辺りの汚物をはねのけていく。


「何発も撃ち込むぞ!」


 剣圧で潰されたのかそれとも綺麗な海水が混ざり始めたのかという部分はあるが、俺が一振りするごとに辺りのモヤが晴れていった。


「見えたぞっ! とどめのSランクスキル発動、剣撃波ソードカッターっ! あの人影を真空波で斬り刻めっ!」


 俺の剣圧は辺りの不浄をきれいにし、敵の汚物でできた鎧を引っぺがす。


「がびゅっ!」


 距離はあるもののウェルシュに俺の攻撃が届いたようだ。

 奴は何度か俺たちに向かって汚物を投げようとしているが、海の中ではそれもできない。汚物は手に取って身体から引き離した瞬間、海水に溶け出してしまうのだ。


「もうこれ以上海を汚すな」


 俺は低い声をわざと出して警告を発する。

 近付いていくと、そこには汚物の付着していない弱々しそうなウェルシュがうずくまって俺をにらみつけていた。

【後書きコーナー】


 いつも応援ありがとうございます。

 海の中に放り出されたゼロたち。考えてみれば魚とかは海の中に排泄物をそのまま垂れ流しているのですよね。魚用の下水道とか完備していませんから。

 そうなってくるとやはり竜宮城の物語が気になるものになってきました。鯛や鮃の舞い踊り。彼らも海に垂れ流し……いやいや、そもそもアイドルはトイレに行かないという昭和の話みたいな事を言っても、ねえ。


 今回で投稿558話、文字数も78万を超えました。

 もう少しキリ番みたいになったら、また経過を報告しようかと思っています。

 でも、量だけじゃなくてランキングにももう一度上がってみたいですねえ。


 いやいや、妄想でした。ありがとうございました。

 ではまた~。

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