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体内巡り

 洞窟の中の地底湖。その周りには気体がある。

 その本質は巨大な海蛇、炎海竜サラペントの腹の中だ。落ちた先には溜まった液体があって、周りには溶けかかった魚や人骨が。


「ゼロ、やっぱりここは胃だよ、胃の中だよ!」

「どうやら胃液は魔力を帯びていないようだ。円の聖櫃(サークルコフィン)で囲われた中には液体が入ってこないからな」


 俺がとっさにかけた円の聖櫃(サークルコフィン)の中に俺たちはいる。薄く広がったシャボン玉のような魔力の膜が俺たちを強烈な酸から守ってくれている訳だ。


「移動、どうしようね」

「そんなもの、進みたい方向と逆に水を噴き出せばいい。ルシルの海神の奔流(ウォーターバースト)は魔力で生成された水だ。完全物理防御の円の聖櫃(サークルコフィン)だが、魔力を帯びていれば貫通はできるからな」

「そっか。よーしやってみようかな! Rランクスキル、海神の奔流(ウォーターバースト)っ!」


 ルシルが噴き出す水は勢いよく俺たちを押してくれる。円の聖櫃(サークルコフィン)を貫通して推進力になってくれた。


「よし、このまま行ってくれ! 目指すはこの液体の流れる先、胃の終わり地点だ!」


 流石にこの中では活動できないのか、白い大きい奴らは追ってこない。

 どうやら溶けてしまうようだからな、本能的なのかどうなのかこのエリアには近寄らないらしい。


「ゼロ、もうすぐあの狭い所だよ!」

「いいぞ突っ込め!」

「判った!」


 ルシルが海神の奔流(ウォーターバースト)の方向と出力を調整して、すぼまっている穴に向かって突き進む。俺は円の聖櫃(サークルコフィン)を維持しつつルシルに押されるがまま前に突っ込んでいく。


「あのさゼロさん」

「どうしたセイレン?」

「あの穴……小さくなってきているよね……」


 言われてみれば確かに。さっきよりも穴が、その向こうに見える物が狭くなっている?


「ルシル、もっと急げないか!?」

「だめ、これ以上力を強めると向きがっ」


 舵取りができなくなれば壁にぶち当たってしまうかも知れない。

 腹の中とはいえ流石は巨大海竜、内臓も岩のように硬い。

 だからこそ洞窟のようにも見えるのだが。


「仕方がない」

「ゼロ! このまま突っ込んでいいの?」

「ああ、行ってくれ! ようし、SSランクスキル発動、豪炎の爆撃(グレーターボム)っ! 壁の近くで爆破させる!」


 剣先から爆炎を発射させる。このスキルなら物体ではないので円の聖櫃(サークルコフィン)も通過はできるからな!


「いっけぇ!」


 俺の爆炎が壁に命中しその業火が内壁を炙ると、縮こまっていた穴が少し広がったぞ。これで行ける!


「通過っ!」


 ルシルがやりきった思いで明るい声を上げた。その喜びは俺にも伝わってくる。

 閃光の浮遊球(フローティングライト)で照らされた空間は同じような岩壁で包まれているが、今までのような広い場所でもなく下に液体が溜まっているでもなかった。


「凄い……」

「何がだ、セイレン」

「ゼロさんもルシルさんも凄いスキルをいくつも使いこなしていて……お二人がいなかったらあたし死んでたよきっと」

「そんな事はない。俺たちがいなかったらお前だってこんな無茶はしなかっただろうさ」

「ま、まあそうだけど……でも、こうして生きているのは二人のお陰だよ」


 嬉しい事を言ってくれるけど、ルシルが気を張った視線で俺を見ている。この感じ、普通じゃない。


「ゼロ」

「ああ」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど」

「そうだな、まだ安全になっているとは言えないからな」


 円の聖櫃(サークルコフィン)を解いて剣を持ち直す。

 この中は空気があるようで呼吸には困らない。変な臭いがするがな。


「礼を言うのは無事に帰る事ができてから、だな」

【後書きコーナー】

 いつもご覧いただきありがとうございます。最新話は投稿すると常に読まれているのが判るので、とても嬉しいですし励みになります。

 そして毎日応援してくださる皆様にも感謝です。


 今回はまた命名のお話。

 体内に入っている状態の炎海竜サラペントは海底火山からイメージして、サラマンダーとサーペントを足して二で割った、みたいなネーミングです。火蜥蜴と海蛇、みたいな感じでしょうかね。

 そう思うと少しは覚えてもらえるかな、とか思いながらあっさり退場してしまってはなんですね。

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