体内の池
大地が揺れる。実際には大地じゃなくて炎海竜の口の中だけど。
いや、少し動きながら戦っていたから、いつの間にか腹の中に行っているかも知れない。
「さあ、重爆斬の威力を受けてみろっ!」
俺の突き立てた剣から魔力がほとばしる。これを食らって平気でいられる訳がない。
俺の攻撃からすぐに炎海竜がのたうち回る。余程効いているようだな。お陰で天が地となり地が天となり、上を下への大騒ぎだよ。
「転がったついでだ、ルシル、セイレン、あの先へと突っ込むぞ!」
「え、あの狭い所通るの!?」
「白い連中から逃げ出すのに丁度いいだろう」
「ゼロ、確かにあの白い奴らはここまで追ってこないみたいだけど……」
洞窟のすぼまっている所へと俺たちは転がり落ちていった。別にこれは俺たちの意図する所ではなく、炎海竜の動きに従って転がされているようなものなのだが。
「水の中だからもっと影響がないかと思ったんだが……案外そうでもないな」
「その水ごと動かされているんだよぅ」
「そうか、押し流されているって事なんだな。俺の攻撃は結構な傷を負わせたかもしれないぞ、うん」
「え~。ただ単に胸焼けでもだえているだけなんじゃないの? だってあの大きさだよ? 島みたいにおっきいんだよ?」
そうなんだけど。ルシルが言うのもそうなんだけどさ。
「いいさ、このまま押し流されていこう。またどこかで攻撃してやればいいさ。なんなら腹を食い破って外に出てやる!」
「それができたらいいんだけど」
俺たちは水の流れに沿って長い洞窟を流されていく。多少は白い奴らも流されてくるが、ほとんどの奴はさっき俺たちがいた場所に残っているな。
「あの白いの、この流れでよく残っていられるな」
「私たちも頑張って泳げばこの流れに逆らって行けたんじゃないの?」
「かもしれないけどな、まあこのままでいいさ。だって……」
目の前の壁が急に開いて穴になる。すぼまっていた壁が一気に開いた感じだ。
「この先にはあの白い奴らも行けない何かがあるみたいだしな」
俺の言葉は間違っていなかったな。俺たちは水の流れごと滝のような所に流された。
「お、空気があるのか? って、くっさ! これは臭いぞ!」
大きな部屋、いや空間か。天井すら見えないくらいの巨大な空間に俺たちは落ちていっているんだ。俺たちが出てきた所が川とするとここは滝。俺たちはその滝を滑り降りている状態だ!
「おわっ、底が、底が見えねえ!」
「ゼロ灯り、閃光の浮遊球を下に!」
「お、おおそうだな。Sランクスキル発動、閃光の浮遊球。下の下まで飛んで照らせ」
俺の近くにある閃光の浮遊球とは別の灯りを作って下に投げた。これで俺たちが落ちる先も明るくなるだろう。
「おい、下に水が見えるぞ! また泳がなければならないのか」
少し空気があったから気を楽にしていたが、もう一度竜神の逆鱗を口に当てる必要がありそうだ。
「ん、この臭い……何かが溶けるような臭いだな。それと煙も出ている……」
下の池には俺たち人間よりも何倍も大きい魚が……半分溶けかかっているじゃないか!
「まずい、この水は……SSSランクスキル発動、円の聖櫃っ! 効いてくれよ!」
俺たちの周りに魔力でできた球形の膜ができる。
「突入するぞ!」
俺にしがみついてるルシルとセイレン。柔らかい、じゃなくて今は落下している最中だ、そんな余計な事を考えている余裕は無い!
ほら見ろ、一緒に落ちてきた白い奴が先に下の池に到達する……と、おいおい!
「なんだあ、溶けているじゃないか!」
白血衆と言っていた奴らで俺たちを追ってきたのか流れに逆らえなく流されてきたのか、理由はともかく落ちた奴は黒い煙を立てて溶け出していく。
「ゼロ! 私たち溶けちゃうの?」
「判らん、判らんが……」
円の聖櫃は展開した。下の池が魔力を帯びていない事を祈るばかりだ。
【後書きコーナー】
いつも応援ありがとうございます!
この後書きコーナー、ネタバレを含む内容をいくつか書き出していますが、それって面白いですかね?
よければご感想をお寄せください。知りたい事とか、名前の由来とか、聞きたい事があったら教えてくださいね!
読者さんとの交流も、面白いと思います。感想から後書きへの返信とかもできたらやってみたいですね。連載作家さんみたいでいいと思います。
ちなみに海虎の六将、名前の由来はマーメイドです。
何の事かと言うと、紙の種類でマーメイドってあるんですね。波のような皺模様が付いた紙なんです。その紙の色から名前を取りました。サフラン、カクタス、エクリュ、ショコラ、ライラック、スミレ。
まあ紙の色なのでマーメイドである必要もないのですけどね、ここは関連を持ったという事で命名しました。それがパーソナルカラーになっていたりもするんです。
それではまた~。