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口腔洞窟

 大きく口を開ける炎海竜サラペント。その咆哮ほうこうもあって、飛び込むにはかなりの勢いが俺たちにも必要になる。


『口っていうか、もう山に空いた横穴みたいな感じだな!』

『余裕かましてないでもっと速く突っ込んでよっ! 途中で口を閉じたら歯が当たっちゃう!』

『そりゃあかじられたら困るな! でもよくよく考えてみたら、身体の中って結構押し潰されちゃうよな?』


 俺のたちの身体だって腹は食ったり飲んだりした時に広がるだけで、日頃から膨らんでいるなんて事はないよなあ。


『あれ、そう考えると口の中に入るって言うのは選択を間違えたか!?』

『今更遅ーい! Rランクスキル海神の奔流(ウォーターバースト)! 海神の奔流(ウォーターバースト)! 海神の奔流(ウォーターバースト)ォ!』


 ルシルめ、後ろに噴き出す水の勢いをとんでもなく速くしやがった! その結果、だ。


『のわぁあぁ!』


 俺の叫びにも似た思考がルシルの思念伝達テレパスに乗ってルシルへ伝わる。きっとかなりうるさかっただろうが、こればかりは許せ。


『ゼロ、口が閉じかけてる!』

『よし、しっかりつかまっていろよ!』


 ルシルとセイレンは俺の背中にくっついていた状態だったが、こうなったら仕方がない!

 右脇にルシル、左脇にセイレンを抱えて、泳いでいる足からはスキルで更に速度を追加させるぞ。

 なんか手とか腕とかにむにゅっとした感触があるけど、今はそれどころじゃないからな! 絶対違うからな!


『別に何も言ってないよう……いいからゼロ、やっちゃって!』

『おう! 両脚から! Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)っ! おおおおし、突っ込めぇっ!』


 炎海竜サラペントの口から音と渦が噴き出してくるが、その口を閉じ始めているから出てくる勢いが尋常じゃなく強くなっている。出口が小さいと水が勢いよく出る、あれだ。


『それでも……突っ込むぞ!』


 口の閉じるのが速いか俺たちが飛び込むのが速いか。最後に思いっきり水を蹴ると、足に溜まった炎の渦が大きな爆発となって俺たちを押し込んだ! この状態で少しでも前に進めるようルシルたちを前方へと投げ出す! 

 その直後だった。俺たちの後ろで岩のような歯がぶつかり合う音が聞こえた。

 よし、計算通りだ!


『きゃんっ!』


 ルシルが可愛い悲鳴を上げていた。

 俺も後を追って岩肌の地面みたいな場所へ転がり込む。


『Sランクスキル発動、閃光の浮遊球(フローティングライト)。灯りよ周囲を照らせ』


 口の中に入っているんだ、当然真っ暗。だから俺の発動させたスキルで当たりを明るくした。

 思ったより中は空間があるな。口の中だから唾液とかいろいろあるんだろうなとか一瞬思ったけど、考えてみれば元から水中だった。


「口の中には飛び込めた。大丈夫かルシル、起き上がれるか?」

「うん……ゼロが急に放り投げるから」


 俺もルシルも竜神の逆鱗で会話ができるようにしていた。やっぱりこっちの方が会話が楽にできるな。


「でもセイレンは立て直しているぞ」

「私はセイレン程泳ぎが得意じゃないから仕方ないでしょ」

「そりゃそうだ」


 もしもと思って二人を少しでも前にって、放り投げちゃったんだよな。


「ちょっとゼロ、足!」

「え?」


 ルシルに指摘されて俺も把握した。右のふくらはぎに長い切り傷ができていた。


「最後少し牙に引っかかったんだろう。大丈夫だこれくらい。Nランクスキル発動、簡易治癒ライトヒーリング。ほらな、すぐ治った」

「そうだけどさ、かすったって事はもう少し遅れていたら足千切れていたかも知れないんだよ」


 恐ろしい想像するなあ。


「無事だったから大丈夫さ。そんな事よりほら」


 薄暗い体内の中で、奥から何やら人影がいくつか見えてきた。


「お出迎えが現れたぞ」

【後書きコーナー】

 いつも読んでくださりありがとうございます。PV、ブクマ、評価嬉しいです。


 今回は名前の話。

 セイレンは、人魚なのでもちろん「セイレーン」から取っているんですけどね、今思えば「清廉」の意味でもよかったな、と思ったり思わなかったり。

 乙凪おとなは、竜宮城といえば乙姫でしょうよ、と言うとこで。乙姫おっきとかにしちゃったらちょっとなー、だったんで、「おとな」って音を採用しました。


 ちょっとした語らいでも結構です。ご感想やレビュー、是非是非おねがいします。

 それでは~。

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