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渦潮の中心

 久し振りに武者震いがする。


「でかいな」


 鎌首をもたげた炎海竜サラペントは、頭だけでも大きな宮殿程もありそうだ。

 海の中といいその巨大さといい、距離感がまったくつかめなくなるくらい大きさが普通じゃない。


「戦闘態勢を」

「うん」


 地面、というより炎海竜サラペントから剣を抜くと海底が揺れる。奴にしてみれば小さな傷なのだろうが、その痛みはかなりのものなんだろうな。そうでなければこんなに海底が暴れない。


「ゆ、揺れる……」


 そう言いながらルシルは俺の服をつかむ。


「この大きさ、この影響範囲……少しくらい距離を取っても相手の攻撃からは逃げられないだろうな」


 それはルシルたちへの戦闘強制参加を意味する訳だ。どこへ逃げても安全な所はないというね。


「ゼロがいなくて私たちだけだったら危ないけど、直撃さえ受けなければ大丈夫だよ!」

「ふふっ」


 相変わらずルシルはこういう時頼もしい。嘘か本当か判らなくても言われた方は安心するものだ。

 だからセイレンも少し落ち着いた表情になっているんだろうな。


「ゼロさん、ルシルさん、あたしも……がんまいまっ……」

「焦るなよセイレン、舌が回っていないぞ。直前の戦いで炎海竜サラペントの怖さを身体が覚えているかもしれないからな、あまり無理をするなよ」


 道案内でとはいえ俺が連れてきたんだ。セイレンは無事に帰さなくてはな。


「はい……ありがとうゼロさん」


 セイレンの顔が溶岩の明かりで赤く照らされている。俺とルシルの言葉で少しは緊張がほぐれたか。

 それにしても赤い光で満たされた海底はそれだけで見る者の気持ちを変えるな。

 赤は血を連想させる。だからそれに恐怖を感じる者もいるし、逆に俺みたいに気持ちが高ぶる奴もいる。


「行くぞっ!」


 この巨大な蛇をどうにか片付ければ、連発している海底火山も収まり地震も海竜の乱れも起きずに元の平穏な海に戻るはずだ。


「Rランクスキル海神の奔流(ウォーターバースト)!」


 ルシルが俺を後ろから押し出してくれる。俺は呼吸だけできるように竜神の逆鱗を口に咥えた。これで会話はできなくなるが両手は使える。意思疎通はルシルの思念伝達テレパスに任せた。

 そんな中、炎海竜サラペントの口が大きく開いた。口というよりはもう洞窟みたいなものだがな。


咆哮ほうこう!』


 俺の合図で全員耳をふさぐ。セイレンにはルシルが思念伝達テレパスで伝えてくれる。

 剣を持ったりスキルで水を噴き出させたりしているから完全にふさぐ事はできないが、肩を寄せたり手の甲で押さえたりであの轟音を耐えられるか。


『くるぞ!』


 炎海竜サラペントから海流と爆音が発せられた。それだけで海の中がかき混ぜられるような大きな渦になる。ルシルの推進力がなければ俺たちもこの渦に飲み込まれていただろう。


『突っ込むよ!』

『そのまま行けっ! Sランクスキル発動、剣撃波ソードカッター!』


 前方から来る渦の圧力を剣技で切り裂いて道を作り、ルシルが文字通り後押しをしてくれた。

 それでも海流の勢いで俺の肩当てが弾け飛んだり表面に細かい傷を作ったりする。渦に砂や珊瑚の破片でも巻き込んでいるんだろう。それが俺たちに襲いかかってきているんだ。


『だがこれくらいでは俺たちを止められないぞ! それに大きく開けた口が命取りだったな、炎海竜サラペントっ!』


 俺たちは大きく強い渦の真ん中を突き進む。炎海竜サラペントの開いた口の中に飛び込んでやる!

【後書きコーナー】

 いつも応援いただきありがとうございます。ブクマ、評価で生きながらえています。

 残念ながら第8回ネット小説大賞は一次通過できませんでしたが、第7回に一次通過した時から冒頭部分は全然変えていないですからね、改稿していないならそれもそうかって感じです。

 ただ、一つの作品で一年以上毎日投稿を続けていると、連載中、同じ小説大賞に二度も参加できたんだなと、変な感動を覚えています。

 よく続いたと思っていますが、それも応援してくださる皆様のおかげ。ありがとうございます。

 これからもよろしくお願いします。

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