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溶岩山の林

 俺とルシルと回復したセイレンの三人で炎海竜サラペント退治に向かう。炎海竜サラペントは海底火山を呼び起こす程の力を持った海竜と言う話だが。


「確かにこの辺りは火山が多そうだが、これも炎海竜サラペントが全部作ったのか?」

「そうよ。炎海竜サラペントは数百年に一度生まれる海竜の突然変異。あまりに強力なため自分の力も制御できずに暴れ回った結果みたいね」

「なるほど。種族という事ではないのだな。道理で伝説じみた話になる訳だ。種族であれば少なからず親子のつながりはあるだろうからな」


 俺たちはセイレンの案内で海底火山の林を抜けていく。山と言うより細長い尖塔のような形をしている。

 水深がそれ程無いのだろうな、まだ海の中に明るさが残っていて視界もそこそこ確保できているな。

 ところどころで活発化している海底火山から赤い溶岩が火口からドロドロと溶け出しているし、そこから出る黒い煙が柱のように立ち上っているから、この海域に近寄る生物は見当たらない。

 いや、たまに見かけるのは海底を這うウミヘビのような魚くらいか。


「こんな所を棲み家にしているとは、炎海竜サラペントという奴も物好きだなあ」

「地中に潜って自分が好きに暴れまくっている結果なんでしょう? だったら自分で作った環境だもん、嫌がる理由がないよ」

「そうだなあ、ルシルの言う通りかも知れない。他人から見れば荒れた海底火山だがこれを自分で作ったと思えばなかなか愛着が湧くかも知れない」

「私は嫌だけどね」


 バッサリ言い切ったな。

 まあ俺もこんな所での暮らしはごめんだが。海底に住むとしても竜宮城ならまだしも、ボコボコ沸き立つ海底火山はどうも落ち着かないよ。


「セイレン、ここからどれくらいかかりそうなんだ?」

「そうね……一つの火が消え二つの山がそびえる、三つの目が訪れた旅人を岩と変える」

「何だそれは」

「竜宮に昔から伝わるわらべ歌よ。前はね、海虎かいこの地形を指しているのかと思っていたけど」

「一つの火が消え、と言うのが海虎かいこの事じゃないか? もう噴火しない山なんだろう?」

「そうみたいね。そして二つの山がそびえるって言うのは……」


 目の前に見えるのは巨大な海底火山。それが両脇に。


「これ……か」

「そう。これが二つの山。海面にまで届く大きな火山よ」

「海底火山……。すごいな、この大きさの山が地上にあったら世界でも有数の高さになるだろうな」


 切り立った崖、奥深くまで続く海の底。そして海面まで届く火山。

 どれもこれも大きさが地上の物とは桁違いに思える。


「そして三点岩があの先にあるわ」

「三点岩……三つの目か」


 小さな虫がいないせいか透明度が高いから遠くでも判る。赤く光る三つの火口。


「あまりにも水が澄んでいるからな、距離感がなかなかつかめないが……もう近いのか?」

「そうね、泳いでいけば目と鼻の先よ」

「そういえばセイレン、お前足は大丈夫なのか。慣れない人間の足で大変だろう」

「泳ぐのには適していないかもしれないけれど、大丈夫。だってあたし、父親が人間だから」


 へえ……え? 人間?


身体変化メタモルフォーゼの能力なんじゃないのか、その足……」

「そうなんだけど、これって一度きりなのよね。ふふっ」


 いやいや笑っているけどそれって結構重大な事なんじゃないのか?


「まあ元には戻れないからどっちみち竜宮には戻れないんだけどね」

「そんなあっけらかんと……」


 あ、ルシルがセイレンに抱きついて……頭をなでている。


「そこまで覚悟していたのね。頑張ったね」

「ルシルさん……へへっ、ありがと」


 セイレンが笑った時に見えたギザギザの歯が海の中で光って見えた。

【後書きコーナー】

 ご感想、評価ありがとうございます。

 海底での冒険も結構長くなってしまった感じがあります。六将とか結構すっ飛ばしたんですけどね。

 その辺りの活躍は、また別の機会に……訪れたらいいなって思います。外伝というかそんな辺りで。

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