海底火山の活発化
溶岩の山にある穴からそいつらは出てきた。
マーメイドが二人、一人がもう一人の肩を支えている。何があったんだろうな。
支えられている方はマーメイドと言っても足は人間のものになっているが。
「海虎の六将をことごとく倒したとはね。すごいよ……」
セイレン。苦しそうにしているのは姉王女の娘、海虎のセイレンだ。
「ああそうか。竜宮が与えた竜神の鱗を使っているのね。よし乙凪」
「はい、セイレンお姉様」
セイレンに肩を貸しているのが竜宮の姫、乙凪。
「これを彼らに渡してくれる?」
セイレンが乙凪に何かを手渡して、それを乙凪が持ってきてくれる。
「これを」
乙凪から受け取った物は虹色に光る鱗。竜神の鱗と同じような形と大きさだ。
「竜神の鱗は口に咥えてもらいましたけど、この竜神の逆鱗は口に添えるだけで水中でも呼吸ができるようになります」
ほう。それは面白いな。
どれ受け取って試してみよう。
『ルシル、俺がやってみるからお前は俺の様子を見てから使ってみてくれ』
『判った』
俺とルシルは思念伝達で意思疎通を図る。マーメイドたちには聞こえない会話だ。
よし、物は試しだ。受け取った竜神の逆鱗を口に添える。
「おお、息ができる。って、おわっ!」
思わず声が出てしまった。それが言葉になる事にびっくりしたぜ。
「しゃべれた。ルシルもやってみ?」
ルシルも咥えた竜神の鱗を取りだして代わりに竜神の逆鱗を口に添えた。
「あ、ほんとだ」
「便利だなあ。水中で息ができるだけでも凄いのに、しゃべる事もできるようになるなんて」
俺たちが感心していると苦しそうだったセイレンが少し笑ったようにも見えたな。
すぐさま乙凪が肩を貸す。
「こうして見ると敵対している様子はないようだが。それにセイレン、怪我でもしているのか」
「あたしもちょっと恥ずかしいけど、一方的にやられちゃって」
「セイレンがやられるなんて、そんなに強い相手なのか。いったい何にだ?」
「それはね、深い深い海の底からの大きな影が……」
「長くなりそうか?」
「あ、えっと、かいつまんで話すね」
「そうしてくれ」
なんだか前にも同じようなやりとりをした気もするが。
「海底の王、炎海竜サラペントがマーメイドを滅ぼしに来たの」
「炎海竜?」
賑やかそうな二つ名だな。どんちゃん騒ぎが好きそうだ。
「はい。炎海竜は海の中にいて炎を操るドラゴンなのよ」
苦しそうだなセイレン。
「そりゃあまたむちゃくちゃな奴だな」
「ゼロだって海の中で炎の渦を作ったりしていたけどね」
「まあな」
そんなドラゴンがどうして。
「見たところ乙凪の説得が功を奏した、とか言う話じゃなさそうだが」
乙凪はセイレンの顔をのぞき込むようにして見つめている。
ふむ、美少女たちが互いに見つめ合うというのもなかなか様になるな。
「ゼロ、何考えていたの?」
「あ、いや別に」
思念伝達は切っていたから聞こえていなかったかな。よかったよかった。
「それで、そのドラゴンがどうしたって?」
「どうもこのところ海底火山の活動が激しくなってきていて、あっちこっちで地殻変動が。その原因が炎海竜だと」
「ドラゴンがそんな事までできるのか」
「はい、それだけの力を持っていて……」
地面を揺るがし火山まで起こしてしまうとは、炎海竜っていったい……。