強大な氷の圧力
六将たちは海底へと消えていく。光が届かないからどうなっているか判らないが、マーメイドだから呼吸はできるだろうし、まあ死んでいなければ生きているだろう。
『なに当たり前の事を考えているのよ』
『ふむ、何となくな』
『ゼロ、あいつ筆頭っていうだけあって強さは他の六将とは段違いみたいだよ』
『そうだな』
水の中は動きがゆっくりになってしまう。スキルを使えばどうにかなるが、普通に剣を振り回してもなかなか当たらないのは他の六将たちと戦った時に学習済みだ。
やはりここは搦手から攻めるか。
「ほう、何か仕掛けてくるというのか?」
マーメイドの戦士サフランの持つ珊瑚の杖から細い針のような水流が出てきやがった。こんな尖った水流を出せるなんてどれだけ強力なんだ!
『Rランクスキル発動、雷光の槍!』
俺の指先から電撃が出たはずだが水の中では霧散してしまうか。
「何かをやったようだがその効果は出たのか!?」
針のように尖った水流が俺の横を通り抜ける。奴が杖を振ればその動きに合わせて海が切れる。海中がかき回されるとかじゃなくて海がパックリと切られるんだ!
『恐ろしい威力だな。距離があっても減衰しにくいようだ……』
『ひゃあ、私の服少し切られちゃったよ!』
ルシルの服があちこち切れている。肌には傷がないようだが。
『そりゃあね、間一髪で避けているから』
『そうか。それにしてもあの杖は厄介だな。どうにか無力化できたらいいんだが』
『そんなの簡単でしょ、いつものゼロなら』
そうは言うけどなあ。慣れない水中の戦闘でどこまでできるかというのも問題なんだよなあ。
「そらそら! ぼさっとしていたら水流で切り裂くぞ!」
サフランは四方八方に杖を振るう。
ぼさっとしてる訳ではないんだがな、一応避けてはいるんだが……なかなか有効な攻撃が見当たらないんだ。
『電撃は駄目だしこの距離だと剣撃波も遠いか。それなら』
両手を前に出して魔力を込めていこう。
『Rランクスキル発動、凍結の氷壁!』
水中で見えにくいが分厚い氷の壁ができあがる。
「それで防いだつもりか!?」
サフランが水流の鞭をしならせると、氷の壁が綺麗に斬り刻まれていくじゃないか。
『威力は想定した通りだからな。いいだろう、Rランクスキル発動、氷塊の槍!』
俺の両手から飛び出す無数の氷でできた槍で勝負だ!
「くっ!」
そうだ、手数の多さで防戦にまわるしかあるまい。水流を放っている杖は一本、俺の放つ氷の槍は何十本と出せるんだ!
「ええい動きで賄え、無双流鞭っ!」
サフランの水流が速くなっただと!
俺の氷の槍が撃ち落とされていくとは。
『そうであれば……Sランクスキル発動、凍晶柱の撃弾!』
更に巨大な氷柱を投げてやる。数は減らさずな!
「なにっ!」
どうだ、お前の水流でもこの氷柱を全部まとめては撃ち落とせないだろう!
「きゃうっ!」
真ん中にあった特大の氷柱がサフランに直撃した。
『ここで!』
次々と氷柱がサフランにぶつかって弾ける。
もうサフランは白目を剥いて気を失ってしまったようだな。
「ここまでやるとはね。驚いたよ」
奥から聞こえる声は聞き覚えのあるものだ。
『ゼロ……』
『ああ。やっとお出ましか』