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六将筆頭の強さ

 ライラックを引きずり回す事何時間か。


『泳ぎ回っている間にやっつけた六将が四人か。初めのライラックを含めれば五人。さて、海虎かいこの六将もあと一人という所まで来たが』

『行く先々に出てくるって事は、進路としては正しいって事だよね』


 ルシルの言う通り、敵が出てくるという事はそれだけ本拠地に近付いているという事なのだろう。


『海面にも近付いてきたのかな、少しずつ光が入ってきている』

閃光の浮遊球(フローティングライト)が無くても見えるようになってきたよ』

『そうだな』


 視界が確保できるとこちらとしては助かるからな。深海の魚とかと違って俺たちは匂いや音で敵を探知できたりはしない。

 俺に対する敵意があれば敵感知センスエネミーである程度の方向性は把握できるんだが、今は引き連れているライラックたちの放つ殺気でかき消されてしまうんだよなあ。

 ため息をつこうにも海の中では竜神の鱗を口から離す訳にも行かない。呼吸ができなくなってしまうからな。ルシルの思念伝達テレパスが使えてよかったよ。


『なあルシル、お前が見た海図だと海虎かいこの拠点はこの先で合っているんだよな』

『そうだよ。もう死火山になっているみたいだけど、大昔の海底火山で隆起した山があるんだって。その頂上にある館というか溶岩をうがって造った穴を棲み家にしているみたいよ』

『へぇ』


 海底火山はこの辺りいくつもあったのだろう。あちらこちらに細長くそびえ立つ山が見えるな。


『この山のどこかに……ってもしかして』

『あおひときわ大きいの……』


 周りの山が小さく思えるくらい、奥に見える山はひときわ大きい。遠くにあるはずなのにすぐ目の前にあるかのような存在感だ。


『あの頂上付近だな』


 俺は六将の五人を引っ張りながら泳いで浮上する。縛っているとはいえマーメイド五人が一斉に泳ぎ始めたら俺の力でも押さえきれないだろう。だが五人の尾ビレをロープでまとめて縛っているから上手く泳げないらしい。

 このやり方はポセイたち竜宮の戦士から聞いた。


『でもなあ、こいつらが一斉に自由になって襲ってきたら面倒だよな』

『だから殺しちゃえばいいって言ったのに』

『ルシル、あんまり魔王魔王しない方がいいぞ。無駄な血は流さないで済めばそれが一番なんだ』

『あら、ゼロも大人になったのね。ちょっと前まで向かってくる敵は容赦なく叩き潰していたのに』

『そうだなあ、なんなんだろうなあ』


 マーメイドたちを見る。だいぶ後から追ってくる竜宮のマーマンたちを見る。


『いつでもあっさり倒す事ができるから、かなあ』

『うっわ~、余裕だねぇ』

『そうかなあ』


 別に照れる訳ではないけどな。反射的に謙遜してみた。

 考えての事じゃないから思念伝達テレパスでも伝わらないかも。


「おやおや、ついに我が出なくてはならなくなったか。他の者たちが戻らないと思ったが、まさか全員が虜囚となっていようとはな」


 前方から声がした。聴いた事のある声。

 六将の筆頭、サフランだ。

 ついにお出ましか、六将最後の一人。


「六将と言えど我以外は員数合わせよ。こうも虜囚の辱めを受けるようでは六将を名乗る資格無し!」


 ほう、言うねえ。


「サフラン、我らはむざむざ捕らえられたのではない! 死して役目を果たせずにいるより恥辱にまみれても生きて汚名をすすがんとこうして生き恥を晒しておるのだ……」

「生き恥、まさにその通りよなあ。しからばその命でもってセイレン様に詫びるのだっ!」


 おいおい、いきなり味方もろとも俺たちに海流の渦を放出してきたぞ!


『ルシル避けろっ!』


 俺とルシルは炎と水流を使って瞬時に場所を移動させるが、残されたマーメイドたちはまともに潮の渦を食らってしまった。


「ぎゃぁっ!」

「うわぁぁっ!」


 渦に飲み込まれて暗い海底へ沈んでいく捕虜となった六将たち。


『とんでもない事をしやがる……。だがあの一撃であいつらの体力を一瞬で削るとは。戦いに敗れたとはいえそれなりの強さはあったはず。竜宮の宮殿も壊れる訳だ……』


 きっと地上だったら冷や汗が出ていた事だろう。

 海の中でよかった。

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