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六将のマーメイド

 俺とルシルが竜神の鱗を咥えて海中を進んでいく。


『Sランクスキル発動、閃光の浮遊球(フローティングライト)。これで明かりには困らないな』

『水中でも使えるのは便利ね』

『だな』


 俺とルシルは思念伝達テレパスで会話している。口を使わなくても済むのはありがたい。

 だが思考を読まれてしまうのは使い方によっては困った事にもならないかな。


『何が困るの?』


 おっと、ほらこういう所だよ。

 俺が考えている事も筒抜けだからなあ。


『別にいいじゃない。私たちの中でしょ?』

『確か東方の国にはこんなことわざがあったな。親しき仲にも礼儀ありとかなんとか』

『そうね』


 ルシルは海中でスカートの裾を少しつまんで小さくお辞儀をする。

 ふんわりとした動きは、舞踏会のような優美な動きだった。


『子供の姿とは違って今は大人の女性……だもんな』

『そうよ、れっきとしたレディなんですからね』

『お、おう……』

『ちょっと見とれていたでしょ』


 思念伝達テレパスを使われていると隠しようがないからな。


『ああ。綺麗だよ』

『ふふっ、素直でよろしい』


 変に気取らなくてもよくなったからそれが逆に気楽なのかも知れないけど、身も心も一体化する感覚っていうのかな。そんな気がした。

 ちょっと照れるな。


『ちょ、ちょっ、何よ急に抱きついたりして!』

『あごめん。ちょっと急に身体が勝手に……こうしたくなって』

『衝動的な行動は思念伝達テレパスでも判らないからびっくりしたよ~』


 それでも嫌がるどころかルシルも俺の身体に手を回してくれる。

 ひんやりとする海の中で俺たちの身体がやんわりと温かい。


「なんだ、逃げたかと思ったらまだこんな所にいたのか!」


 海の中だが声が聞こえる。ぐるっと迂回してきたらしいな。ポセイたちが他のマーマン兵士を引き連れてやってきた。

 ご丁寧に手には三つ叉の槍を持って。


「捕らえる事ができないのなら竜宮城から立ち去ってもらいたい!」


 いったいどういう事だよ。俺たちを勝手に閉じ込めたりしようとしたくせに。

 戦うつもりなら容赦しないぞ!


「ポセイ、姫様は!?」

「さっき海へ投げられてからは判らないが」


 マーマンたちが俺たちとは別の事で騒ぎ始めている。どうもこいつらはまとまりに欠けるというか目の前の事すら集中できないというか。


「見ろ!」


 マーマンたちが上の方に注目する。

 いきなり襲ってくる様子もないからな、俺も見てみようと思ったんだが……。


『ゼロ、あれ』

『だな。乙凪おとなだ。それと……他のマーメイドか?』


 乙凪おとなを取り囲むように何人かのマーメイドが固まっている。貝殻の胸当てや珊瑚の杖とかで武装している一団だ。


「竜宮の姫は我ら海虎かいこの六将が預かる! 我が名は六将が筆頭、サフラン!」


 こいつらの声も普通に聞こえる。海の中だけど。

 陸上と違って普通に返事をしようとすると竜神の鱗を外さないとならなくて、そうすると息ができなくなるからな、黙っているしかないのがもどかしい。


海虎かいこの六将だと!」


 代わりと言ってはなんだけど、竜宮の戦士たちが驚いてくれていた。


「竜宮の者たちよ、我ら海虎かいこに楯突く愚かさを知れっ! それっ、それぇっ!」


 サフランとか言うマーメイドが珊瑚の杖を振るうと水の渦ができる!

 振るうたびに水流が宮殿を襲うじゃないか。


「うわっ!」

「ぎゃぁっ!」


 竜宮の戦士たちも水流に巻き込まれて宮殿の壁に打ち付けられたり屋根に突っ込んだり、まあ簡単にやられてくれちゃっているなあ。


「くぅ……海虎かいこの六将めえ……」


 うーん、ポセイが悔しそうにうめいているけど、そもそも向こうは一人しか攻撃していないからな。まったく竜宮の連中はどれだけ弱っちいんだか……。

 ほら、そうこうしている間に姫を連れて行かれちゃったぞ。


「くっ……こうなっては仕方がない……」


 うわ、なんか嫌な予感がする。


『ゼロ、これってもしかして……』


 俺とルシルの思念伝達テレパスはマーマンたちに聞かれない内緒話みたいなものだ。


『ああ。多分な』


 思った通り、俺たちの前にマーマンたちが集まってきていた。

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