表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

528/1000

息継ぎの検討

 マーマン三人男は陸の上でも活動ができるので乙凪おとなを運んでもらう事にした。

 俺が改めて大きな水瓶を造り、後は太い木の棒を二本使い水瓶を挟み込むようにして神輿みこしのように二人がかりで持ち上げる。前後と水瓶を支える役とで三人とも働いてもらうんだ。なにせ、その水瓶に入るのは乙凪おとなだからな。竜宮の戦士とすれば拒否できる訳もない。それどころか名誉にすら思っているだろう。


「姫様、水瓶の具合はいかがですか?」

「ポセイ、とても快適ですわよ」

「そうですかぁ~、でへへ……」


 マーマンが恥ずかしそうに顔を赤らめるというのもなかなか見られない光景だな。


「ウブね~」

「そう言ってやるなよルシル」

「そうね、彼らからしたら捜しに捜した姫様だものね、浮かれるのも仕方がないよね」

「ああ。ひとまず海に出たら竜宮に案内してもらおう」

「でもさ、私たち海の中ってあまり深くまでは潜れないよ?」

「そう思ってな、俺に考えがあるんだ」

「どうるすの?」


 ルシルの期待している眼差しが痛い……。


円の聖櫃(サークルコフィン)を使うんだ。完全物理防御だから水が入ってくる事もない」

「でもそれだと時間が限られちゃうんじゃ」


 うっ。ある程度は潜れると思ったんだが、長時間だと維持する魔力も辛いか。


「それもそうだなあ。あまり時間を稼げないと行動範囲が限られてしまうな……。もう少し考えるか」

「そうだね、私が魔力供給を手伝って、もっと大きくするとか」

「そうすれば少しは長く呼吸できるな。まあ行ける所まででもいいか」

「うん」


 どうにかなるだろうし、どうにもならなくなったら陸に上がればいいか。


「あの……」

「なんだ乙凪おとな

「よければこれを」


 ん? 魚の鱗か? それにしては大きい。俺の手のひらくらいの大きさはある。


「これは?」

「これは竜神の鱗といって、陸の生き物が海の中でも息ができるようになる魔法の道具なのです」

「そんな物があるなんて」


 なんて便利なんだ。

 虹色に光る大きな鱗。水中で呼吸ができるようになるなんて凄いな。


「よければこれをお使いください」

「いいのか?」

「はい、わたくしたちには必要ない物ですから……もう」


 何か引っかかる言い方だが、まあいい。


「ありがたく借りるとするか。二枚あるからな、一枚はルシルが使ってくれ」

「うん、借りるね。これで息継ぎについては解決したかもね」

「はい。どうぞお使いくださいね」


 ポセイたちがうらやましそうに見ているぞ。


「お前たちマーマンはこれがなくとも息ができるだろう?」

「あ、ああ。俺たちは竜神の鱗がなくても海の中で息ができるのは当然だ!」

「じゃあ何でそんなうらやましそうにしているんだ」

「だって……」


 あー。そうか。


「もしかしてお前たち、乙凪おとなから俺が物をもらったからそれをうらやましがっているのか!?」

「あ、うぐぅ!」


 図星か! 判り易すぎだろう!


「別にこれは俺がもらった訳ではない。必要なくなったら返すから」

「そうか! それならいい。存分に使ってくれよな!」


 言われなくても使うって。


「あの……」

「ん? ああ」


 乙凪おとなは水瓶に入っているから俺たちよりも少し目線が高い。だからだろう、真っ先に見つける事ができた。


「海、だな」

「はい!」


 俺にしてみても久し振りの海だ。潮の香りが鼻をくすぐり、波音が耳に寄せてくる。


「クーデターなんて話がなければ海水浴でも楽しめたのにな」

「事が片付いたら一緒に泳ごうよ!」


 こういう時、ルシルの無邪気さに救われるなあ。


「そうだな、戦いなんて早く終わらせて海で遊ぶとするか!」

「うん!」


 俺とルシルは竜神の鱗を口に咥え、少しずつ海の中に入っていく。

 本当にこれで息ができるのかな。ちょっと心配だったりする……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ