クーデター計画
乙凪をプールから引きずり出す。
もう大丈夫だ、電撃はその前に地面へ抜けていったようだったからな。
「大丈夫か乙凪」
「はい……」
引っ張り出したと言ってもプールの縁で座っている状態。足の先というかヒレはプールの中に入れてバシャバシャしているんだが。
「こいつらが一命を取り留めたのはよかった、のかな」
「生きていたんだからよかったんでしょうね」
「そうだな、うん、多分いい事だろう」
俺とルシルがそんな会話をしているからかな、マーマン三人男はなんだかばつの悪そうな顔をこちらに向けたりしているぞ。まあそんなに気にするな。
「こうなるとマーマンたちの目的の一つは達成できたという事になるが」
「いえ、待ってください!」
「乙凪?」
「確かにわたくしは竜宮の皆さんにご迷惑をおかけしています。ですがこのまま竜宮に帰る訳には行かないのです!」
えらい剣幕だな。一応確認してみよう。
「それはセイレンの事があるからか?」
「はい……。海虎の六将がクーデターを企てているという情報をつかみましたので」
「海虎の六将?」
聞いた事ないな、ってマーマンたちがプールから這い出してきているじゃないか!
「海虎の六将ですと!」
「奴らが竜宮に反旗を翻すと言うのですか姫っ!」
「わたくしがつかんだ情報では、ですが……」
情報源はよく判らない所なのか、自信がなさそうな物言いだな。
だがマーマンたちはそうもいかないだろう。
「これは竜宮に戻って守りを固めなければ!」
「いや、海虎の六将と言ってもマーマンである事は変わりない、こちらから打って出よう!」
「で、でも俺たちだけではセイレンにすらこの有様だぞ」
それ見た事か。マーマン三人男はそれぞれに持論を展開してまとまりに欠ける。
「それで乙凪はどうしようと思っているんだ」
まずは乙凪の意見を聞いてからだな。マーマンどもはやはり頭が……な。
「わたくしはセイレンお姉様に会って馬鹿な真似はしないように説得します!」
「それができるのか?」
「やってみるしか……」
説得は相手のいる事だ。確実というものはないだろうな。
「どちらにせよその六将と衝突は避けられないのか」
「いえ、それも交渉次第で……」
「無駄な血は流さない方がいいからな」
「はい」
ん? ルシルが何か言いたそうだな。
「ゼロはどうするの?」
「え、俺? 別に俺が行った所でどちらに味方するとかはないからなあ。どちらも俺の国とは関係ないし」
「まあそうよね。逆に小屋を壊されていい迷惑って思ってない?」
「う……」
確かに俺の平穏を邪魔しやがって、って思わなくもないけどな。
「余計なお世話かもしれないが、大事にならないように俺が手伝えるようだったら……って」
「う~ん」
まずかったかな、おれがしゃしゃり出るのは。
「ま、いいんじゃない。ゼロらしくって」
「そうか?」
「うん、これも新婚旅行の続きみたいな感じで、海の中とかも行ってみようよ!」
「お、おう……」