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血は争えないのか

 柔らかい物を押しのけて息をしなければ! く、苦しい……っ!


「ぶはっ! いったい何だ、また空から……裸の女の子かよ!」


 俺に飛びついていたのは裸の女の子……いや、また下半身が魚だ!


「またマーメイドか! いったい海はどうなっているんだ!」


 そうは言いながら俺は羽織っている上着をその女の子にそっとかけてやる。紳士だ。胸が見えたりしたのは不可抗力だ。大丈夫だ、ルシルの方が大きいからな。何が大丈夫なのかは置いといて。


「はっ……、もしかしてそこにいるのは……ドンの者たち!」

「ドンの者たち? この戦士たちの事か?」


 女の子は口に手を当てて涙を流す。マーマンたちを知っている様子だが。


「はい……この方たちはドンの者と言って、竜宮の中でも地上での活動に長けた者たちなのです……」

「竜宮の中って、お前も竜宮の関係者か」


 女の子は黙ってうなずく。その仕草は少し上品にも見えるな。とするともしかして……。


「わたくしは乙凪おとな。竜宮の王女にして次期女王です」


 思った通りだ。竜宮に関係する……って、え!?


「竜宮の姫だって!?」

「ゼロ、この子だよこの魚たちが探していたの!」

「いやルシル、魚って言っちゃあかわいそうだろ……」

「あ、うん。ごめん。半漁人?」

「人魚な」


 それはともかくだ。ポセイたちが探していたのがこの乙凪おとな姫なのか。


「とすると、お前が行方不明になっていた竜宮の姫か」

「行方不明? ああ、そうポセイたちに聞いたのですね」

「ああ。竜宮の戦士たちが捜していたと」

「そうですか……それは悪い事をしました」


 なんだかやけにしおらしいな。それに自分が行方不明になっているという自覚がなかったのか。

 ん? ルシルが俺に近寄って耳打ちをしてきたぞ。


「ねえゼロ、もしかしてこの子、竜宮から逃げ出した……とかじゃない?」

「まさか、次期女王だろ? それが抜け出すって……え、え?」


 そんな事ってあるのか?


乙凪おとなって言ったよな、お前」

「は、はい」

「お前、伯母と同じ事をしようとしているのか?」

「伯母様、ですか?」


 虚を突かれたのだろう、驚きが隠せていないぞ。


「ああ。お前の母、女王の姉王女……駆け落ちした王女様と同じようにな」

「な、なぜそれを……!」


 あからさまに動揺しているな。という事は真実か。


「竜巻でセイレンが飛んできて、それからまた乙凪おとなが飛んでくるとは」

「セイレン! セイレンお姉様をご存知ですの!?」

「お姉様……ああ、従姉妹いとこだからな、お姉様か」


 確かに年の頃からすればセイレンの方が年長者にも見えるな。


「わたくしはセイレンお姉様を追ってここまで来ましたの! お姉様はどちらですの!?」

「そ、ちょ、待てっ! 急にそんな……うわっ!」


 乙凪おとなはマーメイドなんだから下半身に力が入らないというか、陸上で立つのには慣れていない様子、というか、勢い余って俺にまたのしかかってきやがった!


「むぎゅう!」


 顔に押しつけられる柔らかい二つの山。


「こら、ゼロからどきなさいっ!」


 ルシルが乙凪おとなを引っぺがしてくれるが、うん、まあ、しょうがない。

 それにしても竜宮の姫がセイレンを追ってきたなんて。ついさっきまでセイレンはここにいたのにな。

 ちょっとマーマン三人男がかわいそうになってきたぞ。

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