表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

520/1000

母親の想い

 セイレンが手で顔を覆って涙声に訴える訳だが……ちょっと気持ちが高ぶっていやしないか?


「どうして……お母様、お母様……っ!」

「おい! セイレン! 落ち着け、深呼吸しろ!」


 駄目だ、セイレンは肩を震わせてうなっている。


「こういうのは危険だ。お前たち下がっていた方がいい……」


 言っている矢先だ。セイレンが俺の手から逃れて駆け出す。手を伸ばしたが遅かった!


「お母様を亡き者にしたのはお前たちかっ!」

「待てセイレン、やめろっ!」


 俺の言葉で制止できるとは思っていないが、一番近いマーマンに飛びついて喉元に食らい付いたぞ!


「ぎゃぁっ! ぐわぁっ!」

「それはやり過ぎだ! もうやめろセイレンっ!」


 それでもセイレンは止まらない。どうなっていやがるんだ!

 セイレンはマーメイドで下半身は……なんだって? 人間の足になっている!


「ゼロ、これって……」

身体変化メタモルフォーゼの一つか! 魚の胴体を人間の足に変えちまうなんてな!」

「それもそうだけどさ、こうなるとただの全裸の女の子だよ」


 ちょっと待て! ルシルがそんな事言うから気にしないようにしていたのに意識してしまうじゃないか!

 いや今はそれどころではないだろうが!


「おぎゃぁ!」


 もう早くも二人目がその牙の餌食になっている! 思ったよりも動きが俊敏だ。


「マーマン! 戦闘態勢だ!」

「わ、おわっ、判って……」


 だがマーマンではこの暴れるセイレンを止められないだろうな。


「Rランクスキル発動、超加速走駆ランブーストっ!」


 間に合えっ! 直線的にセイレンへ突っ込めばどうにかなるか。三人目に手を出す前に横っ飛びで抱きかかえるようにして突き飛ばすっ!


「みゃっ!」

「変な声を出すなよっ!」


 セイレンの身体に横から抱きつく。体当たりの勢いで地面に押しつけてやる!

 腕とか顔とか、もういろんな所にセイレンの柔らかい部分が当たっているけどそれどころじゃないだろう、うん。それどころじゃない。

 口を真っ赤に、マーマンたちの血を滴らせているんだ。これ以上被害を出さないためにもだな。


「お、おのれぇ……おのれぇ!」

「ゼロ危ないっ!」


 セイレンが抱きかかえた俺の腕に噛みついた。魚特有のノコギリのような牙だ。俺の硬い皮膚でもあっさりと肉に食い込んでくる。


「い……てぇ!」

「あぐぅ、あうぅ!」


 獣みたいにうなって俺の腕に噛みつく。


「いいさ、それくらいでは俺の腕が千切れる事もあるまい。気の落ち着くまでそうやって噛みついているといい」

「がうっ、ふがっ!」


 牙はそれ程長くない。俺の傷もたいしたことはないだろうが、マーマンたちは首に噛みつかれているんだ。


「ルシル、こっちはいいからマーマンたちの傷を見てやってくれ」

「うん判った!」


 緊急事態だからな、裸の女の子に抱きついている俺の姿を見ても、嫌味じみた事を言わないでいてくれるのは助かる。


「お母様……っ、セイレンは、セイレンは無念ですっ!」


 涙……?

 セイレン、あまりの悔しさに泣いているのか。


「よしよし」


 俺は腕に噛みついたセイレンの頭をなでてやる。瞳に冷静さを取り戻してきているようにも見えるが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ