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海の中の権力闘争

「俺の考えとしてはこうだ。竜宮王国には二人の王女がいた。姉と妹だ。細かい描写は省くとして姉王女が王宮を出てしまい、残された妹王女が王国を引き継ぐ。いろいろ混乱はあっただろうがその妹王女が女王となって竜宮王国を統べていた訳だ」

「ふんふん」


 いいぞ、ルシルは真面目に聞いてくれている。


「だが妹王女、今の女王の娘が王宮からいなくなった」

「そうなの?」

「おいマーマン三人男、お前たちは陸へ竜宮の姫を探しに来たって言っていたよな」


 さあマーマンたちよ、そこは肯定する所だぞ。


「そうだ、お前の言う通り俺たちは竜宮の戦士だ。いなくなった姫を捜しに陸へ上ってきたのだ」

「海の中は別働隊が探しているからな、陸で動ける俺たちが任されたのだぞ」


 はいはい。説明ご苦労。


「という訳だ。竜宮の姫がいなくなった、それは捜せばいい話だ。だが王宮内ではそれで済まなかったのだろう」

「もしかして……」

「そう、多分ルシルも気付いているだろうが、このマーメイドの娘、姉王女の娘でもあるセイレンが問題となった。姉王女はもうこの世にはいないのだろうがその娘が生きている」

「竜宮の中でも姉王女派がまだ残っていたと」

「恐らくな。元々王位継承権は姉王女の方が上だったのだろう。その頃の家臣や姉王女派閥の者たちが粛正されずに生き延びていたら」

「姉王女の娘であるセイレンを担ぎ出して復権を狙う」


 俺はうなずいてみせる。権力闘争などというつまらない話はおおよそがこんなようなものだろう。


「きっと姉王女が出奔しゅっぽんした時に大粛正が行われたのではないかな? そうだろうマーマンの戦士たちよ」

「ど、どうしてそれを……」


 駆け引きどころか肯定しちゃったよ。

 いやあ本当にマーマンたちは頭が魚だなあ。素直というか包み隠さずというか。魚な上に筋肉で出来ていそうな脳みそだ。


「だが姉王女派でも全部が全部粛正された訳ではないだろう。逃げ出した者もいれば隠れた者もいたろうし、表向き妹王女派に転向した者もいただろうな」

「どうしてそこまで……」

「人間の国も権力闘争なんていうのは同じようなものだから……こればかりは陸も海も集団というもののさがみたいなやつなのかな」

「凄いな……」

「妹王女派からすると、妹王女、今は女王か。その娘がいなくなった所に姉王女の娘が現れでもしたら、自分たちの派閥が力を失うのではないかという恐れもあるのだろう」

「そんな、まるで見てきたような……」


 思った通りというか何というか。それで竜宮の姫を捜しつつ、あわよくば姉王女の娘であるセイレンを亡き者にしてしまおうという策謀……。まったく反吐が出る。

 セイレンにしてみれば母親が出奔して生活も困窮していただろう。その中でどうにか生きてこられたのにこの騒ぎだ。とばっちりにも程があるよな。


「そんな事……」

「セイレン?」

「お母様は権力なんて欲していなかった。自分が王宮を出てから王位継承権を剥奪された事も人づてに聞いて、それでよかったと本当にほっとしてた……。そんなお母様も病で……。なのに、叔母おば様はそんなあたしが生きていては迷惑だと言うのね!」

「おい、セイレン? 大丈夫か」


 セイレンの肩に手を乗せる。


「ん? 手から煙が……」


 なんだ、俺の手が燃えようとしている?

 セイレンの身体が熱いのか?

 俺は温度変化無効のスキルが常時発動しているから熱でダメージを受ける事はないが、だが水分が蒸発して手が焼けそうになっている事は把握した。

 魚は人間の体温でも火傷する事もあるらしいがこれは逆だ、セイレンに触れた方が火傷をしてしまう事になりかねん。


「どうしたセイレン! 大丈夫か!」

「どうして、どうして……」


 これは何かセイレンを落ち着かせなければ……。

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