探索の目的に二人の姫
有無を言わさない圧力でどうにかマーマン三人男の戦意は喪失させた。
「元々は竜宮の一族なのだろう? だったらなぜ命を付け狙う。セイレンはもう出奔した奴の娘ならもう関係ないと言ってもいいのではないかな」
「そ、それでは俺たちの役目が……」
「うーん、嘘で報告するのも気が引けるなあ。さて、どうしたものか」
マーマン三人男は素直に帰る気はなさそうだし、忠義に篤い者たちのようだからな。自分たちの命さえも投げ出そうというのだから、口先だけではどうにもならないだろう。
「なあ、お前たちに聞くが竜宮の姫も行方不明だと言っていたな」
素直にポセイたちはうなずくんだよな、これが。裏表がなさそうでいいんだけどさ、ちょっと張り合いに欠けるというか。まあ、俺に抵抗する意味も無いと覚悟したのかもしれない。
「お前たちの役目は竜宮の姫を見つけて無事に竜宮まで帰る事、それと出奔した姉王女の娘、この子セイレンを亡き者にしようという事。この二つで間違いないな?」
「ああ、そうだ。俺たちの任務はその二つ。そのために竜宮の戦士でも特に陸上活動に長けた三人が選ばれたのだ」
「確かにお前たちの陸での動きはたいしたものだと思う。俺でも水の中は動きがとりにくいというのに、その逆で海の中で活動している奴が陸に上がるなど、なかなかできたものではないよな。それはともかく、セイレンの命をくれてやる訳にはいかない」
「なぜだ!」
「何となくだ!」
か弱い女の子、ではなく理由はどうあれ俺の庇護下にあるこの子をはいそうですかと引き渡す訳にはいかない。これは勇者として譲れない矜恃だ。
「何やってんの、ゼロ」
背後に気配があると思ったら、ルシルか。森から帰ってきたようだ。
「お帰りルシル。竜巻で降ってきた魚を探しに草原に行ったまではいいけどさ」
「拾ってきたのがその魚人間って事? う~ん、食べて食べられなくもないかなあ。でもオスだからね、よく火を通さないと食べられないけど、逆にそうすると肉が硬くなっちゃうのよね~」
あー。ルシルはマーマン三人男を食べ物と認識している……。
「いやこいつらは食べ物じゃなくてだな、竜宮の戦士たちなんだよ」
「えー。やっぱり食べる用で持って帰ってきたんじゃないんだ」
「当たり前だろう! ていうかこんなの食えるかよ!」
「そうだけどさー。って、麻袋も破れて落ちているし、いったい何があったの?」
「ああ、話すと長くなる事だけどな……」
俺は簡単にかいつまんで説明をしてやった。思念伝達で説明してもいいのだが、周りのこいつらにも状況を認識させるためにあえて口頭で話してやる。
「なるほどねえ。ゼロはどう思う? 陸に上がれる奴がこいつらしかいなかったからまとめて任務を与えたとか?」
「それもあるが、どうせなら姉王女の系統を滅亡させようとする謀略にも思える」
「え、どういう事?」
俺の考えが間違っていなかったらだけど。