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竜宮と海虎

 セイレンの首元を狙っている。確かあいつの名前は……なんだっけ。


「やめるんだ、えっと……ホッカイ!」

「お、お前俺の名前を覚えて……」


 当たった! 危ねえ、正解だった!

 確か正面の奴がポセイとか言っていた。水を吹き出したから俺が凍らせてやった奴。それで、右の奴はカイなんとか、だ。俺が右肩を吹き飛ばしちまった奴だ。


「ホッカイやめるんだ。その娘を殺しても何にもならないぞ!」

「な、何を言っている! 俺たちは竜宮の姫様を探しているけどそれと同じくらい姫様を宮殿から追いやることになったこの海虎かいこの姫が許せねえんだ!」


 とかなんとか長いこと喋ってくれたおかげで、超加速走駆ランブーストをかける余裕が生まれた訳だ。


「説明ありがとう」


 俺はホッカイの背後に回り込み、首の後ろに手刀を入れる。えいっ、と。

 これでこいつは気を失う。簡単なもんだ。


「よっと、怪我はないかセイレン」


 とか何とか言って倒れ込みそうになるセイレンを抱きかかえる。これは不可抗力だ、紳士な俺が自然に出る行動だ。

 抱きかかえた肩が柔らかいとか濡れた髪で隠れている胸がチラチラ見えてドキドキするとか、そういうのではない、決して。だいたいそう言う事を考えていたら思念伝達テレパスでルシルを怒らせちゃうからな。


「セイレンとりあえず座っていろ。それで奴らの言っている事は確かか?」

「はい……あたしたち海虎かいこの民は元々竜宮の一族でした」

「長くなりそうか?」

「あ、えっと、かいつまんで話すね」

「そうしてくれ」


 こういう話は面倒なんだよな。いろいろと尾ひれがついたりしてさ。

 俺は簡単な内容がわかれば十分だ。敵か味方かくらいな。


「あのね、先代の竜宮王の頃に娘が二人いて、姉が一般男性と駆け落ちして王宮を出てしまったの」

「よくありそうな話だな。それで」

「妹が今の竜宮の女王様で、家出した姉というのがあたしのお母さんなの」


 ふむぅ、これもまたよくありそうな話だ。どうせ継承権がどうとか剥奪しても血筋が残っていたら面倒だとかそんな話だろう。


「それで、今の竜宮の姫っていうのはなんだ?」

「今の女王様の娘が乙凪おとなちゃんっていう女の子で」

「お、おう」


 女の子の名前が乙凪おとなっていうのか。子供なのにおとなっていうのはなんだか変な感じがするが、まあいいだろう。変な感じがするけど。


「その乙凪おとな姫というのがどうしたって?」

「それはあたしにも……」


 じゃああのマーマン三人男に訊くか。


「おいお前ら……あ、というかちょっと待て」


 仕方がない、俺は右にいた、えっと……カイセンだったか。そいつの所に行こう。


「ななな、お前、やるか! この野郎!」


 威勢はいいな。右肩が千切れているっていうのに。意識を失わないで抵抗する気概はたいしたものだ。


「片腕になったとて俺は竜宮の戦士! 一矢報いるまでは簡単に倒せると思うなよ!」

「判った判った。勝負がついているのは理解しているんだろう? Sランクスキル発動、重篤治癒グレートヒーリング。ほらこれで腕がくっついたぞ。動かしてみろ」

「あ、はぁ……ありゃ、本当だ! 痛みもない!」


 カイセンは元通りになった腕をさすって動かしていた。


「すげえなあんた……」

「まあ勇者としては当たり前の力だがな」


 ここで俺は胸の前で一度大きく手を叩く。掌同士が重なって大きな音を辺りに響かせ、その音と圧力で周りの奴に注目させるのだ。


「よし、話をしよう! ここは俺の国、レイヌール勇王国だ。お前らの都合なんて俺の国には関係ない! お前らは俺の国に入ってきた異邦人というわけだ。だから俺の国で勝手な刃傷沙汰は認めん! いいな!」


 言い切った。俺の知らない所で勝手をするならまだしも、俺を巻き込んでのいざこざで命のやりとりなんかしてもらいたくないからな。

 だって、面倒じゃないか。

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