迷子の捜索隊
恥ずかしそうに身をかがめているマーマン三匹。
「なんだお前たちは元から全裸だったのに、鱗を剥がされたらそんなに恥ずかしいのか?」
「う、うるさい黙れっ……」
何を恥ずかしそうにしているんだ。上半身はごつい男たちだが、そいつらがテュルテュルの魚部分を各層としている姿が何とも……気持ち悪い。
「だいたい何だ、どうしてお前たちマーマンが歩いていられるんだよ」
「お、俺たちだって歩く事くらいできるわい!」
「ほほう、ならやって見せてもらおうか」
それができるのなら、セイレンも同じようにできるのかもしれない。水瓶の中に入れっぱなしはかわいそうだからな。
「ほら、これを使え」
俺は親切にも鱗の禿げたテュルテュルのヌメヌメを隠せるように、荷物で持っていた麻袋を放って渡す。底を破けば簡易的なズボンに早変わりだ。
「お、おう。済まんな」
「鎌わんさ」
俺が剥いた鱗だし。
「よっと、ほい」
マーマンたちは麻袋を履いて立ち上がった。確かにヒレを上手く使って直立姿勢を維持している。
「それで、魚の件は解決でいいんだな?」
「う、うむ。仕方がない。俺たちの食い扶持さえ確保できればと思っていたが」
「その割には欲張りだったよな」
「む、むむむ……」
いじめるのもこれくらいにしてやろうか。
「ここは海からはそれなりに距離のある平原だ。人間の俺からすれば大した距離じゃないが、お前たちマーマンにしてみればかなり厄介な土地だろう? いったい何しに来たんだ」
凄む必要もなさそうだな、マーマンは素直に答えてくれる。
「お、俺たちは竜宮の姫様を探しに来たのだ」
あー。いやどうかな。
「姫様?」
「そうだ。俺たちの大切な竜宮の姫様だ。先日の大嵐の時、姫様が竜宮から突然いなくなってな、海の中はもちろん陸の上まで探索に来たのだが、これがまた全然見つからない」
うーん。
「それでこの辺りに空から魚が降ってくるという話を聞いて、もしや姫様がこちらにおわすのではないかと思って急ぎやってきたのだ」
「ほほう。捜索隊として三び、いや三人だとこの広い大陸ではその姫様とやらを探し当てるにも苦労するだろう」
「そうなのだ。陸に上がった者は俺たち、カイセンとホッカイ、そして俺ポセイに託されたのだ」
こいつはポセイと言うのか。そして後の二人がカイセンとホッカイ。なるほどな。
「何の因果か俺の知っているマーメイドが近くにいる。引き合わせてやってもいいが?」
「本当かっ!」
おいおい、食いつき方が凄いぞ。グイグイ来る。
「是非、そのマーメイドに会わせてくれ!」
「なんだお前偉そうだな」
「あっ、えっと、会わせてください……」
ふむ、よい心持ちだ。
「いいだろう、ついてこい。別にお前たちの歩く速度には合わせないからな」
「はいっ、それはもう!」
俺はあえて少しだけ早歩きで拠点へと戻ろう。さて、マーマンたちは本気でついてくるかな?