耕作したけど
「なあルシル、屋根ってこんなもんでいいか?」
俺としてはそこそこの出来。岩の板壁で壁を作り、その上にもう一度岩の板壁で屋根を作る。前にレイラが使っていたスキルを見よう見まねでやってみたけど、なかなかうまくいったかな。
「すごい、こんな短時間で! これだったら雨風はしのげるね」
「だろう? 本格的に家を建てるにはレンガを作ったりしないとならないだろうけど、とりあえずはこんな所で勘弁な」
「いいよいいよ、毛布で野宿するより断然違うって!」
ルシルが喜んでくれると俺も嬉しい。
なぜかは知らないけどセイレンも水瓶の中で喜んでいるようだ。
「簡易的な部屋と井戸に使える水源の確保。初日としてはまずまずかな」
「だね~。私ももう少し頑張らないと!」
ルシルは草原の一部に雷の矢を撃ちまくっている。威力は控えめだが、いったい何をしているのやら。
「こうして……少しずつ場所をずらしていって……」
「おお、なるほどなあ!」
思わず声が出てしまった。ルシルが電撃を爆発させた地面はほどよく土が爆散している。それが雑草を焼き切って、その上土を掘り返す役割を果たしているとは。
「やるなルシル」
「鍬を使うより簡単に耕せるでしょ? へへ~ん」
「確かにな~。農機具持ってきていないからな、これはいい。電撃が抜けきれば種も植えられるし」
「野菜とかの種は持ってきているんだよね?」
「一応な。ほらこれ……」
なになに、袋に書いてあるメモによるとだな……。
「ヒマワリ、マリーゴールド、菊……ん?」
「ゼロ、それ花の種ばっかりじゃない?」
「お、おお……。やっぱりそう思うか!?」
「あちゃ~。私もシルヴィアからもらった時に確認すればよかった……」
「俺もだ。シルヴィアから、花のある生活っていいですよね~なんて言われて、そうだななんて返事しちまったもんだから……」
「ははは、花じゃお腹は膨れないよねぇ。でもこれはしょうがないよ」
ルシルはこういう時でもあんまり気にしていないというか、切り替えの速さに助かっているよ……。
「ちょっと草原をぐるっと移動して、野菜とか穀物の原種みたいなものがないか探してくるか」
「大丈夫? もしかしたら一度は野菜になった後に野生化したやつもあるかもしれないよ」
「そうだなあ、魚だって空から降ってくるくらいだ、野菜の種くらいなら飛んできていてもおかしくないよな?」
「食べられるの、あるといいねえ。じゃあ私は森の方へ行って、芋類とかを探しに行こうかな」
「お、それの方が可能性高そうだな。それに今食べられる物があったらそれも頼みたい」
作物を育てるとなるとどうしても時間がかかるからな。ここ数日は魚を食べていればどうにか食いつないでいられそうだけど、草原や森で獣を狩ってそれを食料に充てなくちゃな。
そうなると保存方法も考えなくちゃならないし。
「う~ん、やる事がいっぱいだな」
「王様をやっていた方が楽だった?」
なんだよルシル、楽しそうな目で俺を見やがって。
「今の方が自由でいいさ。んじゃちょっと行ってこようかな」
「うん! 私も出かけてくる。それじゃあセイレン、お留守番お願いね」
「あい~」
セイレンも嬉しそうに水瓶の中でバシャバシャやっている。この水瓶もどうにかしてやらないとな。
ほんと、やる事がいっぱいだよ。