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竜巻に乗って

 マーメイドって陸上でも動けるのかな。今はまだ噴水の水が結構降ってるけど。

 でも魚は空気じゃ呼吸できないとか、なんかそんな事を昔にピカトリスから聞いた事あるし。


「なあ君、苦しくないのか? 見た感じ普通に息はできてるみたいだけど」

「うん……」


 マントを羽織っただけの姿なんてどうも目のやり場に困るなあ。とか言って、さっきまで裸だったんだけど、ただの裸よりもこういう格好の方が、まあなんだな。うん。エロい。


「ねえゼロ、しゃべれるなら空気も大丈夫なんじゃない?」

「そっか。俺も詳しくは知らないけど、エラで呼吸している感じもないからな。言われてみればそうだな。じゃあさっきの空から来たって話だけど」


 空を見上げても神々と戦っていた頃の浮き島がある訳でもなさそうだし。

 って、なんか飛んで……。


 びしゃっ。


「ぷぎゃっ」


 なんだこれ……海藻? 空から俺の顔に海藻が降ってきた?


 バチャチャチャチャッ!


「うわっ!」

「ひゃぁ~」

「魚!? 魚がいっぱい降ってきた!」

「いったいどういう事よ~! ゼロ、またなんかやったんでしょ!?」

「やってねえよ!」


 俺もルシルも空から降ってくる魚を避けるのに必死だよ。だいたい何で魚なんて……。


「もしかして君もこれで……?」


 俺の質問にマーメイドがうなずいたって事は、やっぱりそう言う事なのか。


「何か知ってるの!?」

「ルシル、竜巻ってあるだろ」

「うん。あの風が巻き上がっていくやつでしょ」

「そう。ここから海はそう遠くない。海で起きた竜巻で魚とかが吸い上げられて、空に放り投げられたんだと思う」


 ガブッ!


「ゼロ……頭にサメが食いついているよ……」


 痛いな……。


「じゃあこの魚女も竜巻でって事?」

「魚女って言い方はかわいそうだろう。そう言えば君、名前は?」

「あ……」


 ちょっと恥ずかしそうな顔を見せるマーメイド。悪くない。恥じらいっていうのは悪くないぞ。

 この降り続く魚たちの雨がなんだか変な感じだけどな。


「あたし、セイレン。マーメイドのセイレン」

「じゃあセイレン、君は竜巻に乗って飛ばされてきたんだね?」


 一所懸命首をコクコクさせるその仕草がなんとも……。


「立てるか?」

「ん~」


 セイレンは立ち上がろうと頑張ってみるようだ。魚の尾びれに力を入れているっぽい。


「むむむ~」


 頑張れ。頑張れ。心の中で応援していた俺はいつの間にか握りこぶしを作っていた事に気付いた。


「だめ~」


 セイレンはぺしゃんと座り直してしまう。やっぱり無理か。


「座ったりはできそうだが……流石に立つのは難しいな」

「ゼロ、これ使ってみる?」


 ルシルが担いできたのは飲料用に使おうとしていた水瓶だ。


「お、いいね。セイレン、ここに入れるか?」

「うん」


 セイレンが了解したので俺はセイレンを抱えて水瓶の中に入れる。この中に噴水の水を入れれば簡易的な水槽にはなるな。


「じゃあこの中で少し大人しくしていてな」

「うん!」


 水をバシャバシャやって喜ぶセイレンの姿。かわいいじゃないか。

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