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凄惨な生産状態

 俺たちの見たものは、手錠をかけられ壁につながれたゴブリンたちだった。

 搬入口と思っていた通路よりも広い部屋には、ほとんど裸に近い格好で、身につけている物といえば腰布程度のゴブリンたちが壁に沿って並んでいた。

 ゴブリンの腰には器のような物があり、首から吊されて落ちないように固定されていた。ゴブリンは胸に刀傷を付けられ、そこから流れる血が器に溜まっている。

 糞尿は垂れ流しになっていて、床には汚物がそこかしこに散らばっていた。


「こんな、酷い……」


 ルシルは魔王の頃の記憶がある。当然部下としてのゴブリンたちもいた。それだけに、このような虐待は見ていられないのかもしれない。


「いったい何のために」

「知りたいかい?」


 俺たちのいる所から離れた場所、部屋の反対側から女の声がした。


「あたいたちにバレていないとでも思ったのかい、反逆者たち!」


 暗い中でもうっすらと見える。腰まで伸びる赤い髪を無造作に束ねて露出度の高い鎧を着ていた。手には巨大なバトルハンマー。


「ゼロ、あれは……」

「多分そうだろうな」

「何か知っているのかい勇者ゼロ」


 見覚えはある。元々俺が持っていた物だ。女戦士用の鎧は流石に使わないしサイズが合わないためルシルも着ない。


「あれは歪んだ妖精ディストローテッド・フェアリー、魔王の宝物の一つだ」


 女戦士が近付いてくる。その姿がよく見えるようになった。

 露出の多い鎧で、トップにあたる胸の形に妖精の目が描かれ、腰の位置を守るボトムの部分と合わせると笑った顔になるようデザインされている。

 だが、これも他の秘宝と同じように呪いがかけられていて、笑顔が歪んだ物になっている。


「防御力は高いままだろうが装着している者の意思に反して動きを阻害する呪いがかかっていたはずだ。それに呪いが解けない状態では重すぎて使い物にならない。あの手にしている戦鎚バトルハンマー骨砕き(ボーンクラッシャー)も同じだ。本体重量だけでもかなりのものだが、呪いが解けなければさらに数倍の重さになる」


 だがなんだこの違和感は。


「このコナーセッカの魔術工場に現れるとはねえ、あたいも運がいいってもんさ!」


 女戦士は骨砕き(ボーンクラッシャー)を振り下ろす。重さのためか軌道は読みやすい。

 俺は軽く避けるが地面に叩き付けられた戦鎚の衝撃が床を伝う。


「うわっ、揺れる!」

「危ないっ」


 足下がおぼつかないルシルとセシリアを後ろに下げ、俺は腰の剣を抜いて女戦士と対峙する。


「あたいは傭兵ブレンダ。ムサボール王国から受け取ったSSランクの武器と防具に見合った働きをしてあげなくちゃねぇ! 魔術工場の守衛なんてつまらないと思ったけど、反逆者たちが来てくれたんだ。こりゃあ追加報酬をもらえるいい機会だねぇ!」


 ブレンダが俺をにらみつけて不敵に笑う。


「さあ楽しませてくれよ、元勇者様よっ!」


 あの一撃はまともに食らったら俺でも危ないかもしれない。剣で受け流すにしてもこちらの武器の耐久性が心配だ。


「そんなゆっくりした動きで俺を捕まえられるならな」


 俺は剣先をブレンダに向けると、そのまま突進した。

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