消去させる破壊の力
最後の浮き島がゆっくりと下りてきて大地と接触する。どこからかえぐってきた浮き島だからお椀のような形で平坦な大地に置くようには出来ていないはずだが、不思議な力で支えられているようで割れたり砕けたりせずに地面の上に乗った状態で静止した。
「さてと、この領域は我らに与えられた世界、ストランド!」
「モンジュ三巨頭の世界!」
「俺たちの世界!」
浮き島から降りてきた三人は口々に喜びを爆発させている。
そんな姿を俺たちは遠目に見ていた。
「ゼロ、降りてきちゃったよ」
「神を自称する者たちはあの三人とバイラマと言っていたあの影、か。俺たちのこの世界を勝手に自分たちの物と言っている奴らか」
俺の周りにはウィブや凱王たち飛竜が控えている。ホーツクの町の人々はなるべく遠くへと逃がした。そのため俺の近くにいるのは戦闘も可能な仲間たちだけだ。
「ホーツクの住人は全員救助できた事はとても素晴らしい」
俺はあの状況で救助を完遂できた凱王たちをねぎらう。
「だからこそ神とやらに好き勝手をさせる訳にはいかない、そうだろう?」
俺の声に仲間たちがうなずく。
「俺が交渉に行こう」
ゆっくりとだが確実に俺は足を踏み出す。神を名乗る三人と話をするためだ。
バイラマの影は既に消え去った。そうなるとこいつらだけが情報源となる。
「やあ現地の者よ」
三人の神の一人が俺に話しかけてきた。
「それがしはシュリ、モンジュ三巨頭の一頭である」
かしこまった言い方で軽く頭を下げて、それでいて視線は俺から離さない。
鋭い眼光が俺の視線とぶつかる。
「これよりそなたらはモンジュ組の預かりとなる。よくよく働く事だ」
シュリの脇にいる二人は俺たちを見てニャニヤと笑っていた。
ドラゴンやワイバーンたちが唸り声を上げ始める。神たちの威圧に反発する本能がそうさせたのだろうか。
「うるさいなあ」
シュリの隣にいた女が手を横に一閃する。
「なっ!」
女の手の線上にいたドラゴンたちが消滅した。そう、跡形もなく光の粒となって消えたのだ。
「お前っ、何をした!」
俺は剣の柄を握りいつでも抜剣出来る体勢になる。
「うるさいから抹消したのよ。これで少しはシャノンたちの話を聴くでしょう?」
ドラゴンたちを消し去ったシャノンと名乗る女が薄ら笑いを浮かべながらそう応えた。
「ゼロ、ここは」
「くっ……」
俺は柄から手を放す。
シュリが指を鳴らすと彼らの後方にあった浮き島が消えた。これもまた光の粒と化して。
「バイラマ様からいただいた力、素晴らしいな!」
「対象を標的として、後は破壊を指示するだけで地形から何から消せちゃうんだからね」
「地形操作も簡単にできるって事か、凄いな……」
何なんだこいつら、言っている事は判るがその内容はまったく理解できない。
「これが破壊神の力、だというのか……」
俺のつぶやきを耳にしたのか、シュリが得意な顔をして俺を見る。
「そうとも! これがバイラマ様の世界を操作する力! お前たちキャラクターオブジェクトにも効果は及ぶのだ、これからは言葉に気をつけるのだな現地のも」
俺はやはり最後まで言葉を聞いている程我慢が出来なかった。シュリの言葉は途中でかき消える。
「シュリ!」
「いったい何が……」
シュリの身体は光の粒となって消滅した。俺の剣がシュリの首を一閃したからだ。
「Sランクスキル超加速走駆からのSランクスキル剣撃波連続発動だ。瞬間的な剣捌き、目にも留まらぬ速さだと思うが?」
俺は覚醒剣グラディエイトを鞘に納める。
残り二人の神は腰を抜かさんばかりにうろたえていた。