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ポーション工場

 道らしい道は無いが木々をかき分けて工場まで進む。

 工場の外観はレンガ造りになっていてそれを囲むように柵が設けられている。


「ここがポーション工場か」

「情報が正確であればだがな、勇者ゼロ」


 俺たちは辺りを調べて入り口になりそうなところを探す。


「兵士の立っている扉があるが他には無いか探そう。工場なら品物の出し入れで大きな扉があるはず」


 少し離れて様子を見に行ったルシルが戻ってくる。


「ゼロ、あっちにあったよ。少し坂になって地下と出入りできるところがあって、馬車も通れるくらい大きな門」

「ありがとうルシル。よし行ってみるか」


 セシリアもうなずいて後についてくる。

 先程の門番の他に人の気配はしない。大きな門は閉まっていて、そこにも兵士の姿はなかった。


「確かに大きな門だが、地下への坂になっているから外からは何も無いように見えるのか」


 俺は坂を下りながら門を見る。

 金属製の大きな枠に押し上げる形の金属の扉。大きいと言っても門の高さは二メートルを超えるくらいか。俺たちの荷馬車なら通れる程度だ。


「重そうだねこの扉」

「そうだな」


 俺は片手で扉を押し上げる。少しだけ軋んだ音がした。


「確かに重い。俺がそう思うのだから本来は滑車で巻き上げるとかするのだろうな」


 屈めば通れるくらいの高さで止める。そこからルシルとセシリアがくぐり、俺も後に続く。


「むっ、これは……」


 獣のようなにおい。獣といっても猫耳娘になったカインのようなにおいではなく、野生の獣のような汗と体臭と汚物の混じったにおい。

 床には馬車の車輪と蹄の跡が残っている。


「まだ轍は新しいな。それに蹄の跡が入る方向と出る方向の両方あるということは、頻繁に往来しているようだな」


 俺はゆっくりと扉を下ろす。

 屋内は明かり取りから微かに入ってくる光でなんとか見える程度だ。


「それにしてもこのにおい、なんなのかしら……」


 ルシルがハンカチで鼻を押さえながら愚痴をこぼす。

 薄明かりではよく判らないが段々目が慣れてくると辺りの様子も見えてくる。

 ここは大きな通路になっていて、左側の壁は大きめの扉がいくつも付いていた。


「ここが搬入口として近くには倉庫や保管場所があるだろう。倉庫の近くには製造場所があると思うし、研究室や開発室はもっと奥まったところにありそうだ」

「どうしてそんなことが判るんだい?」

「なんとなくな、荷馬車に荷物を詰めるなら、置き場は近い方が効率がいいと思っただけだ」

「ほう、なるほどな。確かに港の近くに市場があるし、市場の近くには店がある。そういう事か」


 セシリアもガレイの町の様子を思い浮かべながら状況を理解してくれる。流通については流石商人ギルドの副ギルド長だ。


「ねえゼロ、そうするとどこから探せばいいかな?」

「そうだな。まずは取り扱っている物が情報通りポーションなのか、それを確認したい。その次には汚染された排水がどこで作られているのかを突き止めなければ」


 まだ人の気配は無いが、いつ騒ぎになるか判らない。今のうちに調べられるところは調べておきたかった。

 俺は手近な扉に手をかける。


「いいか開けるぞ」


 ゆっくりと扉を開けた先にあったものは、俺たちが予想をしていなかったものだった。

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