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神々の戦い

 俺は振り返って後ろを見る。そこには大量の濡れた地面。


「ゼロ、水の……ルッサールが、消えた……」


 ルシルが見たままの事象を説明するが、その反応で俺には異常さが伝わった。


「弾けたというより糸の切れた操り人形……いえ、人をかたどった器が消えたみたいだった……」


 俺の背筋に冷たい物が走る。


「フハハハ、まだもう一人いるようだが……ふむ、見当たらんようだな。それでは致し方ない、また来るとしようぞ! フハハハ!」


 バイラマの影は大きく揺らいだかと思うと空中に溶け込むように消えていった。


「いったい、何だったんだあのバイラマという奴は……」

「でも、直接手を下さずにルッサールを消したんだよ、ゼロ」

「ルシル、気をしっかり持て。いいか、ストリィと連絡を取ってくれ。この島をなるべく早く地上に戻せと」

「う、うん。思念伝達テレパスで伝えてみる。でもどうして……」

「このままではこの島に住んでいる者全てが死ぬ事になる」

「判った」


 俺の真剣な表情にルシルも応じてくれた。

 俺は敵感知センスエネミーで敵の気配を探る。


「くっ、やはりこの程度ではバイラマを感知できないか……ウィブ!」

「どうしたのかのう」


 俺はウィブに耳打ちをしてワイバーンのしっかりした首を軽く叩いた。


「儂は構わんが、それでもよいのかのう」

「ああ。頼めるか」

「陛下の頼みとあれば」


 ウィブが頭を下げて俺の問いに応える。


「よし、行けっ!」

「おう」


 ワイバーンが大きく羽ばたくと瞬く間に空へと飛んでいく。


「頼んだぞ、ウィブ」


 俺はウィブの見えなくなった方向を見つめていた。


「ゼロ、ストリィに伝えてきたよ。あれ、ウィブは?」

「もしものためにな」

「そっか。私たちだけならどうにでもなるよね?」

「ああ。俺たちだけなら、な。だがこの島の国民全員ともなると流石に難しい。ストリィが早くこの浮き島を降下させてくれればいいのだが」

「それなんだけど……」


 町の近くからストリィが現れる。


「どうした急に我を呼ぶなど。こ、これは……」


 ストリィは濡れた地面を見て息を呑む。


「ルッサールがバイラマに消された」

「なん……バイラマだと」

「そうだ。どう消したのかは判らないがバイラマがルッサールを水に変えてしまったのだ」

「バイラマが……マスターが動いたという事か」

「マスター?」

「世界を統べる神々の王、とでも言えば伝わるか」


 ストリィの言葉にルシルも驚きの声を上げる。


「神々の王……」


 そんなルシルの肩に手を置く。小さな震えが俺に伝わってきた。


「それでどうだストリィ。降下は進めているか」


 ストリィは小さくうなずく。


「だがそうなると我らの戦いはこれで終わりとなってしまう」

「戦い?」

「そうだ。我らが浮き島を造ったのは神々たちの戦いを勝ち残るため。浮き島で同士で戦い相手の島を排除するか支配下に納める。そうして勢力を増やしていき最終的に一番多く強い勢力となった者がこの世界の支配者となれるのだ」

「浮き島同士の戦いだと」

「ああ。それが我らのこの次元での役目であり目的なのだよ。だが」


 ストリィの表情は半ば諦めたかのような脱力した、生気のない物だった。


「我とて駒の一つに過ぎぬ。ルッサールはバイラマに消滅させられたのだろう。それは我とて同じ。バイラマにとって我を消滅させる事は赤子の手をひねるようなもの」

「どういう事だ」

「消された理由は判らん。お前たちにくみしたとかその程度のものだろう。だがそれは規定に反する事だと判断されたのだろうよ」

「ルッサールはお前の仲間だろう!」


 俺はストリィの胸ぐらをつかむ。


「そう熱くなるなよ人間。そうであれば我もいつ消されるか判らんという事だ。我らはこの次元で滅びたとて元の次元へ戻るだけ、かりそめの姿を捨てるだけだ」

「お前たちはそれでいいだろうが、俺たちはそうもいかないんだよ! 勝手な戦いに巻き込んだあげく大変になったら簡単に諦めるなんてそんな無籍にな事はできん! いったいお前たちは何様のつもりだ!」

「だから言っておろう、我らは神だ。そなたらよりも高位の存在、戦いのためには大地の形さえ簡単に変える力を持つ者だ」

「何をっ!」


 俺はつかんでいたストリィを放り投げる。


「神だなんだと言いながら俺たちの世界を滅茶苦茶にしやがって! だが今だけは粛正をやめてやる。さあさっさとこの浮き島を地面に下ろせ!」

「それをした所で我に何の利がある」

「民を解放すれば、俺がお前の力になってやらんでもない」

「今はバイラマの目に我が映っておらんようだからな、消されずに済んではいるが……我とてルッサールと同じでいつ消されるやもしれんぞ」

「それを止める手立ては無いのか?」

「無いな。我も規定を破った者と判断されているとすれば、もはや勝負からは外されているであろう。バイラマに見つかればいつ消されてもおかしくはない」


 ストリィは諦めの声と共に吐き出した。


「だとすればまだ健在のうちに島を下ろしてもらおうか」

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