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神の消滅

 俺の放り投げた巨大な浮き島はそのままひっくり返った状態で落下していく。

 既に自重に耐えられなくなっているのか、逆さまになって不安定な状態を維持できずに崩壊と分裂を繰り返す。


「なあ、あっちの島にも人はいたと思うか?」

「どうしたのゼロ。あれだけの大きさの土地だもん、誰かは住んでいたでしょうね」

「そうだよな。どこの土地を切り出したのかは判らんが、町らしい建造物は見えなかった。だからそんな大規模な集落はなかったと思いたいが。なにせ俺たちの国土だからな、仮に住んでいたとすれば俺たちの民だ」

「そうね……」


 俺は歯噛みをするがしてしまった事はどうにもできない。今ホーツクの町にも数千人の国民がいる。彼らを見殺しにしないためにも、全てを守るまではできなかった自分が情けなく思う。


「それでもゼロは凄いよ。あんな島まで投げちゃうんだもん」


 努めて明るくルシルが俺を慰めてくれる。


「ああ、ありがとう……」


 俺は遙か下で崩れていく島の音を耳にしていた。


「面白い……これは面白いのう」


 どこからともなく声がする。


「どこだ……上か!」


 俺が上空を見つめると、そこには空に投影されたような影が雲に映っていた。


「あれだけの大地を跳ね返すとは、人間にしてはなかなかの力量だな。ふむ、面白い」

「何を言っている! まさかお前、お前がこれをやったとでも言うのか! あの島をぶつけてきたのはお前か!」

「フッフッフ、どうやら頭もそう悪くはなさそうだな。いいだろう、予直々に説明してやろう」


 空中の影が楽しそうに揺れる。


「予はバイラマ。お前たち人間が神と呼ぶ存在だ」

「高次元の存在……お前もか」

「ほう、概念として神を名乗ってみたがそこまで理解が及んでいたとは驚きだな。ふむ、さては神の裏切り者、お前たちにくみする者……いや、屈した者がいるのかもしれんな。そこから情報が漏れたか。ふむ、それもまた面白い」

「俺にとって高次元とやらが何を指すのかまでは判らない。お前たちが俺よりもとんでもない程の力を持っている事は判った。だからといって俺が、俺たちがその力に屈する訳には行かないがな!」

「吠えおるわ! ワーッハッハッハ!」


 影が大笑いして揺れた。それと共に大気も震えているかのようだ。


「ふむ、なるほど。そこに見えるはルッサールか」


 ルッサール? 水を操る自称神か。いつの間に俺の後ろへ来たのか。


「バイラマ様! お懐かしゅうございます。我は、いえわたくしめは低次元の猿どもにくみした訳ではございません、ましては屈するなど!」


 ルッサールが幼女の姿で上空の影に話しかける。


「この次元に生きる者へ力を貸したという事ではないのか?」

「は、はい!」

「さすればなにゆえお前はそこにいる。そこの人間と共にいるのだ」

「そ、それは……」


 ルッサールは言い淀む。


「おいそこの影。お前たちが勝手に低次元だなんだと言っているがな、俺たちは俺たちで精一杯この世界で生きているんだ。それをいったいなんなんだ! 急に現れて大地を切り取り宙へ浮かせ、町や人ごと危険にさらしている! 俺の国民をだ!」


 俺はこの理不尽な状況に怒りを持って叫ぶ。


「そこの水娘は俺たちを襲ってきた。俺を殺そうとした! だから捕らえたまでだ!」

「ほう」


 空の影が歪んだように見えた。


「このような輩に捕らえられたと。だが今は自由の身になっているようだが?」

「俺にとってもはや敵ではないのでな。もう一度俺を殺そうとした所で返り討ちにしてやるだけだ」

「ほう! ほうほう!」


 バイラマと名乗った影が面白そうに笑う。だがその直後に冷酷な響きに変わる。


「その程度か」


 俺の後ろで水袋の破裂するような音が聞こえた。

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