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ちゃぶ台返し

 空を覆い尽くす程の影が頭上に広がっている。


「これは……ホーツクの島よりも大きいぞ……」

「うん……」


 俺もルシルも多くを話す事ができない。ホーツクも町が一つ丸々入り、その周囲に畑や森が広がる程の大きさだ。

 だがそれよりもはるかに大きい浮き島が俺たちの上に位置していた。

 今破壊したばかりの浮き島とは規模が違う。


「ウィブ、すぐに町へ戻ってくれ!」

「承知した!」

「どうするのゼロ!」

「どうするも何も、あんな大きさで襲ってきたらホーツクの島なんて簡単に潰されてしまう!」

「逃げ、逃げなきゃ……」


 俺たちはとにかくホーツクの町へと急ぐ。


「凄い勢いで追ってきてるんだろうが、あの大きさだからな……とてもゆっくりに思えるよ……」


 俺は冷や汗をかきながらも迫る巨大な浮き島を目で追う。


「あの大きさ、国レベルだな……」


 俺のつぶやきは解決にはまったく役に立たない。だが大きさの認識としてはあながち間違ってもいないだろう。


「移動速度が速い……このままでは押し潰されるぞ」


 ウィブがホーツクの町の手前に滑り込む。地面が爪の形に削られてめくれ上がる。

 俺はウィブから飛び降りると迫ってくる浮き島に向かって両手を突き出した。


「SSSランクスキル発動、円の聖櫃(サークルコフィン)っ! 完全物理防御だ、押し出されても潰されはしないぞ!」


 俺が広げた魔法の壁が虹色に光ってドームのような半球を創る。


「みんな衝撃に備えてっ!」


 ルシルが後方へ呼びかけてくれた。そのお陰で俺は空飛ぶ国島に集中できる。


「うおぉぉ!」


 国島が円の聖櫃(サークルコフィン)に接触し、途方も無い衝撃が俺に襲いかかってきた。


「腕が……押し潰されそうだ……」


 円の聖櫃(サークルコフィン)で物理的な接触は避けられているが、中心にいる俺への圧力はかなりのものだ。

 何せ俺を通じでホーツクの島が押されていくくらい。俺の全身が上から潰しにかかる国島を押さえ、その勢いでホーツクの島を押し出すだけの力を受けているのだ。


「これしきで……潰されてたまるかぁっ! こらえろぉ、Sランクスキル追加発動、重筋属凝縮マッスルブーストっ! これで……押し戻せぇっ!」


 俺の全身に力がみなぎる。筋力が増強され全身が一回り太くなっていく。


「ゼロ! 風のを連れてきたよ!」

「よしルシル、風の神とやらに俺たちのいる島を動かして……こいつから避けるように……」

「判った! 聞いたでしょ風の! あんたも潰されたくなかったら島を動かしなさいよ!」


 俺の後ろでルシルが風のストリィに協力させるよう話す。緊急事態だ、表現としては多少難があるもののそこは目をつぶってもらおう。


「確かに我もこのまま朽ちるつもりはない。よかろう、手を貸して進ぜよう」

「もったいぶった言い方なんていいから、とっととやりなさいよ!」


 ルシルがストリィの頭を目一杯ひっぱたく音が聞こえた。


「いたたた……。判った判った! だからそう叩くのはやめてくれ!」

「判ったのなら早く!」

「ようし……」


 地面が動いているのが判る。俺が国島に押されている圧力で地面を押し出しているのではなく、地面そのものが下へと動いている感覚だ。

 地面が動いてくれればその分俺が挟まれる力も弱まる。


「いいぞ……そのままもっと動いてくれ……」

「こ、これが動ける精一杯、だ……」


 ストリィのうめくような声が聞こえた。


「それなら……っ!」


 俺は腰を逸らして腕にかかる力を後ろへとずらしていく。


「ぬ、くくく……」


 少し、ほんの少しだが国島の押してくる力の方向が後方へずれていく。

 それに加えてホーツクの島が下に降りていくため、力の均衡が崩れていった。


「もう……どっせぇーい!」


 掛け声一つ、俺が国島を後ろへ投げ飛ばす。巨大な浮き島は天地が逆さまになった状態で落下していった。


「大丈夫ゼロ!?」

「ああ……」


 俺はルシルのSSSランクスキル、蘇生治癒マキシムヒーリングを受けながら落ちていく国島を眺める。


「勝手に俺たちの土地をえぐり取りやがって。地面に落ちて山にでもなるんだな!」

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