たたき落とすために
目の前にも巨大な土の塊が浮いている。大地からえぐり取った地形がそのまま浮いている状態だ。
「ここもホーツクの町みたいにどこかの町が浮いているのかな?」
「どうだろうな、行ってみなければ判らないだろうが、それよりもこの飛んでくる岩をどうにかしなくては!」
ウィブの背には俺とルシルが乗っている。
向こうの浮き島から巨大な岩が次々と飛んできて俺たちのいたホーツクの町がある島へと落ちていく。
「Sランクスキル発動、剣撃波! あの岩どもを砕けっ!」
俺が斬撃を放ち岩石を粉砕する。
「くそっきりがない!」
「ゼロ、とにかくあっちの島を落とせないかな!?」
「ホーツクの町よりも高い位置にいるから攻撃がしやすいのだろうが、だがどうするか……。そもそもどうやって島が浮いているのかも判らないからな、あの風の神とやらがこっちの島にもいて浮かせているとかだったら厄介だぞ」
「そいつを倒さなきゃならないからね」
「その通りだ」
俺は飛んでくる岩を迎撃しながらウィブに上昇するよう指示した。ウィブは急上昇して俺たちはウィブの背中に付けた鞍に身体を預ける。
「お……浮き島の地面が見えてきたぞ。」
視界が一気に広がり、浮き島の平地部分が見えた。平坦な地形で多少の針葉樹が並んでいる程度。
「ホーツクの浮き島よりはかなり小さいか」
「そうだね」
「ならば行けるか……!?」
俺は腰に当てた剣に腕力と魔力を込める。
「誰があの岩石を飛ばしているのか見えるか?」
「うん! 岩場の脇にいる岩石でできた巨人みたいな奴、あれが地面を掘り起こして投げてきているよ!」
「さしずめそいつが岩の神とか大地の神とかなのだろう。よし、ルシルはそいつを牽制してくれ!」
「判った!」
ルシルは岩石巨人に火の玉を次々と投げつけた。
着弾した火の玉は激しく爆発する。
「ゼロ、私だけであいつをやっつけちゃうかもしれないよ!?」
「それならそれで構わないけどな」
ルシルが言うように、数度の爆発を経て岩石巨人が砕けて散った。
「やったよゼロ! ……って、ええっ!?」
驚きの声を上げるルシル。それもそのはず、砕けたと思った岩石巨人が岩場の至る所から生えてきたのだから。
「いったいどれくらいいるのよ!」
「やはり一度にまとめて相手をする必要があるな」
俺の周りで光が渦を巻く。
「いいわ、判った。ゼロやっちゃって!」
「ああ! 行くぞっ、SSSランクスキル発動、重爆斬!」
「私もっ、SSSランクスキル地獄の骸爆っ!」
俺が振り抜いた剣が空間を切り裂き浮き島を無数に切り刻む。そこへルシルの地獄の骸爆が島に命中する。
斬撃が通過した所で島そのものが分裂し、更に大爆発で浮き島ごと爆散させる。
大小様々な大きさの塊になって島だった物が落ちていく。
「これくらいならどうにかなるな」
「そうだね、って……え!?」
ルシルが驚いて上を見る。
頭上にあるはずの日の光がさえぎられていた。