高次元生命体
ストリィもルッサールも俺の威圧感に身をこわばらせる。俺の怒鳴り声を聞いて座ったまま固まってしまったのだ。
「どうした、神ともあろう者が俺ごときに答える事もできなくなったか!」
「ひぃっ!」
俺の恫喝に幼女体型のルッサールが怯えて縮こまる。
なんだか変に罪悪感が生まれるもののここは押し切るしか無い。今は幼女体型だが元々はジャガードの口から出てきた白いブヨブヨだ。形なんぞは好き勝手に変えられる。その姿に騙されてはいけない。
「待て、待ってくれ」
ストリィが言葉を絞り出す。力の差が理解できている今だからこそ、こうして下手に出ているのだろう。
「俺たちは神の中でも低級の神だ。風や水を操るといってもその力も限られている」
「ほう、その物言いだともっと高位の神もいるという事だな」
「ああ」
ストリィは緊張しながらも俺の問いに答える。それが今できる最善の道だと理解しているようだ。
「そもそも神とは何だ? 俺たちとどう違う」
俺は率直に訊く。
「神、それは高次元の存在だ。我もルッサールも現し身とは異なる者でありこの世界とは別の、更に高次の生命体だ」
「はぁ? 何を言っているんだいこいつは」
「よせアラク姐さん。ストリィ、続けろ」
俺はいきり立つアラク姐さんを押さえてストリィに手を出させないようにする。
アラク姐さんはひとまず大人しく椅子へ座ってくれた。
「それで、高次元とは何のことだ」
「それは……まずこの世界の成り立ちから説明せねばなるまい」
ストリィは咳払いを一つして呼吸を落ち着ける。
「この世界は我ら神々が創り出した世界。天空を支配する神より別れし大地母神が大地を創り我らが大気を、そして海や雲を創った」
「ほう、そこまで力を持った者たちがなぜ俺たちの国に手を出したのだ。お前たちの言う事が正しいとすれば人も神が造った物だろうに」
「我らとて一枚岩ではない。神は分裂しあまねく世界を覆い尽くした。分裂しなければ大地母神の創りたもうた大地を覆い尽くせなんだからだ。だが分裂した事で神の力も弱まってしまった……」
「その一つがお前たちだとでも?」
ストリィは寂しげに、だがしっかりとうなずいた。
その瞳には強い意志を感じる。
「我は風の神ストリィ。持てる力は微少なれど我を慕う生き物や木々を滅びの運命より救いたいと思ったのだ」
「滅びの……運命」
「そうだ。我らと同じくして生まれた神々の中には今の世界が理想とかけ離れていると感じてる者もいる」
「神が造った世界だろう」
「だが創った後にそれが失敗だと思った際にはそなたなら如何する」
「それは……」
自らが創り、それが望む形では無かった場合。
短絡的に考えるのであれば……。
「破壊……」
ストリィはうなずく。その所作には厳かなものが感じられた。
「創生神バイラマ。数々の世界を滅ぼした破壊神でもある」